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パワーハラスメントを容認するな

 このブログのアクセス解析をすると、「モンスター上司」という言葉を検索して見に来ていただいている方が、ずいぶん多いことに気付きます。「モンスター上司」というキーワードは以前に週刊SPAが特集した言葉ですが、なかなか根強い人気(?)がありますね。

 これは、職場でのパワーハラスメントに問題を感じている人の多さのあらわれだと思います。私たちも、パワーハラスメントの実態、それを取り締まる法律、解決の方法などについて研究を重ねています。なぜなら、「パワーハラスメント」と被害者本人が認識していなくても実はそれに悩まされているのだという話が身の回りによくあるからです。

 パワーハラスメントとは、職場での上下関係を土台にして起きる嫌がらせ・暴力事件のことです。上司が部下に、先輩が後輩に、正規社員が非正規社員に対して行うような事件です。おおよそ次の三つに分類できます。

 一つ目は、上司が部下に物理的な暴力をふるうということです。なかまユニオンの組合員の中にも、上司からスパナで殴られたという経験のある人がいます。職場でのあからさまな暴力事件というのは実は思ったよりも多く発生しています。殴られた、蹴られた、投げ飛ばされたという事件でも、ちょっとしたケガをしてもほとんどの場合には警察に行く人がいないので、実態はなかなかわかりません。死んだり重い障害が残ったりしたというケースだけが警察沙汰になり明るみにでるのです。

 二つ目は、上司が部下に違法な業務をさせるということです。最近マスコミでもよくとりあげられる、産地偽装とか賞味期限偽装とか、企業ぐるみ犯罪の時にこれが発生します。部下が違法性に気付いていて、良心の呵責から「いやだ」と思っていても、上司が「業務命令だ従わないとクビだ」とか「これをしなければ会社がつぶれるんだ」とか言って脅かして違法行為を強制することがあります。これもパワーハラスメントの一種です。

 以上の二つは、刑法に違反するような犯罪行為で、上司の側の刑事責任を問うことができるものです。このような事件では、問題が明るみに出さえすればパワーハラスメントを行った上司が警察に逮捕されることもありえます。

 三つ目は、モラルハラスメントです。この場合のモラル(moral)は「道徳的な」という意味よりも「精神的な」の意味が近いですね。モラルハラスメントとは、精神的な嫌がらせのことです。言葉、態度、その他の日常的なふるまいの中で、精神的に嫌がらせを行うことです。これは、日本ではまだ取り締まる法律が整備されていないので、警察もとりあってくれません。

 しかし、民事裁判で精神的苦痛に対する損害賠償を求めてそれが認められたケースがあいついでいます。「企業には職場でのモラルハラスメントの防止の義務がある」という判決もあいついでおり、ハラスメントを実行した上司個人の責任だけではなく、ハラスメントを容認・放置した企業責任も認識されてきています。

 上司による精神的な嫌がらせのことを問題にすると、「ミスをしたことに対して叱ったくらいでパワーハラスメントと言われるのか」という感情的な反論が必ず帰ってきます。逆ギレっぽい裏返ったような声で反論する方が多いのがいつものことです。それは違うんですよ。部下のミスを叱ったり、責任を追及したりすることがモラルハラスメントなのではありません。

 モラルハラスメントの特徴は、何回も繰り返し嫌がらせが行われることです。執拗にねちねちと、来る日も来る日も、小さな嫌がらせが続くことによって、被害者の精神にダメージが与えられるのです。それは特定の人をターゲットにした意図的で継続的な攻撃です。ごく少量の毒を毎日毎日飲ませることで長い年月をかけて毒殺するというタイプの攻撃です。

 小さな嫌がらせが続くことを問題にすると、「それは思い過ごしだ」「気にするほうがおかしいんだ」「人間関係がうまくいかないことは世の中どこにでもある」「それをいちいちハラスメントだと問題にするほうが気が小さい」などと言って、被害者のほうがおかしいのだと主張する人が必ずと言っていいほどあらわれるのも、モラルハラスメントの特徴です。

 これも違います。事実関係をよく調べればわかることですが、単に職場の中の人間関係の悪さというレベルをこえて、はっきりと被害者・加害者の関係があらわれた場合をモラルハラスメントというのです。実に、そういうケースが多いのです。職場の士気が落ちて会社の業績が落ちる程度の被害なら巷にいくらでもあります。被害者が退職に追い込まれたり、うつ病になったり、自殺したり、命にかかわる人権問題になってきているのです。

 このかん、多くのモラルハラスメント被害者が勇気をだしてその実態を語り始めています。おかげで、モラルハラスメントが発生している場合の状況についての研究がずいぶん進んできました。これまではまんまと責任逃れをしてきたモラルハラスメント加害者を見分ける方法も次第にわかってきています。

 私たちは、企業にはパワーハラスメントを防止する義務があると考えています。物理的暴力も違法業務もモラルハラスメントもすみやかになくさなければいけません。職場内でのパワーハラスメントの解決に責任を持たない企業が社会的に淘汰される時代が、近いうちに必ずやってくると考えています。パワーハラスメントの存在で労働者を抑えつけることで利益をあげようと考えたり、組織ぐるみでパワーハラスメントを行っている企業などはもってのほか、言語道断です。

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パワーハラスメントを撲滅するために」カテゴリの記事

コメント

始めまして、私は某テーマパークの常勤(パートタイム)で勤務してます。職場でわ配車、時間調整等を行って居ます、今年1月に同職場内であろう数名の者から私含め三名に対する、匿名の誹謗中傷文書が会社宛に届けられ、幹部、上司から同勤務員(11人)に対し事情聴取が行われました。その場で、一切誹謗中傷を受ける様な仕事はしていない又、各月勤務時間、内容等確認して頂く様依頼、幹部は匿名の個人に対する誹謗中傷については、厳しく処分すると回答を受けました。しかし、結果的に、今は業務を変更させられ、こちらの主張は一切聞き入れられず、匿名で誹謗中傷を行ったであろう、者が業務を行う事となりました。誹謗中傷の件はうやむやのまま現在は、云われ無き事を再調査していただこうと親会社宛に書面にて申し立てを行いたいのですが、問題点書式等良いアドバイスを頂きたいと思います。今年44歳になります、自分の生活を守る為宜しくお願い致します。

投稿: たかはし | 2009年3月 2日 (月) 11時16分

 職場でのトラブルの解決にあたっては、事実関係を明確にするところから始まります。何月何日に誰にどのようなことを言われた、どのような文書が発行された、どのようなできごとがあった、そういうことを日記にして記録しておくことが重要です。
 自分にとって何が不利益なのかを第三者にもわかるように明らかにすることも必要です。
 たかはしさんの場合は、業務変更が自分にとってどのように不利益であったのか(賃金、労働条件、業務内容など)をはっきりさせるべきですし、そこに至る過程でどのような事実経過があったのかを時系列の記録にまとめてみる必要があると思います。
 匿名の誹謗中傷があったことが事件の発端であったというのであれば、その誹謗中傷の内容がどうおかしかったのかを事実に基づいて明らかにしなければなりません。

投稿: みるめ | 2009年3月10日 (火) 13時40分

 はじめまして。ペンネーム(ウェブネーム?)の偽装心ですが私がワルイ事をしているんではなくて、”歳とか無職だった期間を嘘つきたいな。。。”という意味です。     世の中には、様々なハラスメントがありますが、私がハラスメントと感じたのは”女性相談員の口調”です。私はパワハラで退職したことがあり、そのことがトラウマとなっていることをその相談員に話すと『何年も前のことなのに引きずらない!!』と心無い口調が返ってきました。励ましの感情は入っていない言い方で、まるで私にだけ非があるかのような言い方でした。以来誰かに相談する、という事じたいにストレスを感じるようになりました。新聞などには、相談員にカチンとくることをいわれたなんて読者の声はめっっったにないですよね。タダで相談にのってもらっているんだから、とでもいうのだろうか。。。    また、ドクハラもあります。これはメンタルクリニックの女性医師からのハラスメントなんですが、短期バイトが決まったとき、業務開始まで日数があいていたのですが体調が思うように回復しなかった為にバイトを辞退するハメになって、”気持ちは働きたいのに体調が追いつかないというギャップがつらい”といったら『そんなに世間に出ることが怖いなら作業所行く?!』と。  作業所の人たちには失礼な言い方になるかもしれませんが、私は作業所にいくほど対人恐怖症ではありません。だから活発にではないけれど、就職活動が出来ている。それなのに
”アンタは通常の会社にむいてない”的な言い方をされました。ちゃんとお金を払って診てもらっているのに。当然そのクリニックに行かなくなりました。いったって、かえって鬱のタネをもらうようなものだから。この出来事もトラウマ。

 凹みやすい人間はただ耐えるしかない?


   後半は労働とはあまり関係ない文章になってしまいました。
   長々と乱文ごめんなさい。
   

  
          

投稿: 偽装心 | 2009年3月30日 (月) 21時25分

 偽装心さん、コメントありがとうございます。
 お話からすると、ハラスメントの二次被害にあってしまったようですね。心が痛みます。
 二次被害というのは、パワーハラスメントの被害にあった人が、その解決のために勇気をふりしぼって信頼できそうな誰かに相談したのに、その相談相手に理解されずにさらに深刻な精神的なハラスメントを受けてしまうことです。
 残念ながら、現在の日本ではパワーハラスメントについて実態にあった分析ができている労働組合や医師は少ないので、二次被害が大量に発生しているのは間違いないのです。
 私たちも、被害者が我慢するだけに終わらずに、パワーハラスメントを廃絶する実現可能な筋道を模索しています。
 諸外国でのパワーハラスメント禁止法の実例なども勉強しながら、着実な一歩を踏み出していきたいと考えています。
 私たちのチャレンジは続きます。いっしょに考えて行動していきましょう。

投稿: みるめ | 2009年3月30日 (月) 23時57分

はじめまして。料理店で接客、及びお運びの仕事をしています。勤めて2ヶ月になりますが、毎日毎日執拗に「今すぐして」と2人がかりで命令されます。飲食店なので時間との戦いなので優先しなくてはいけないことが度々あり、その命令を後回しにしたからです。私はいつのまにかその2人のストレスのターゲットになりました。その2人は他の人も自分達の味方を増やし、私のいない所で私の悪口を吹き込んでそれまで常識的に接してくれていた人も態度が急変してきました。
そのような状態ですから職場の人に対してトゲトゲした態度をとりがちになり、その2人への支持層が広がっていきました。何だか職場全体の人に対して裏切られたという悲しみと不信感を持ってしまいました。

投稿: フシンカン | 2012年3月25日 (日) 10時43分

 コメントありがとうございます。たいへんでしたね。
 パワハラ犯罪事件の実例を見ていると、集団でグルになって一人の人にいじめを集中することがよくあります。
 パワハラの首謀者は一人か二人なのですが、周りの人間をまきこんで、いっしょにいじめるように持っていくのです。集団いじめに参加しないと、次はその人がいじめのターゲットにされてしまうので、いやいやながらもいじめという犯罪に手を染めてしまう人も多いのです。
 ですから、職場でのパワハラ防止策としては、パワハラ首謀者の取り巻きグループをいかに解体に追い込むかということが、たいへん重要な課題になっています。
 職場で起きているトラブルが、単なる人間関係の行き違いなのか、犯罪的なパワハラなのかは、職場の外の人間にはなかなか分かりづらいものです。ですから、いじめられていると感じたら、まずはそのことを記録に残しておくことをおすすめします。

投稿: みるめ | 2012年3月26日 (月) 22時14分

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