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黙示の労働契約って、なんのこと?

 質問をいただきました。

 「もくしの労働契約」って、なんのことですか。

 「もくしの労働契約」は漢字で書けば「黙示の労働契約」ですね。パナソニックPDP裁判の争点になっているのが、この「黙示の労働契約」です。

 「黙示の労働契約」とは、書いてある字のとおり「だまって示す労働契約」です。

 このことを考えるためには、まず「労働契約には契約書がなくてもいい」という基本的な考え方を知っておく必要があります。「口約束による労働契約」です。

 実は、労働契約には必ずしも書面つまり契約書が無くてもいいのです。不動産の賃貸契約の時などは、契約書にどう書いてあるかが決定的に重要になってきますね。契約書がなければ不動産契約は成立しません。

 ところが、労働契約は書面をとりかわさなくても契約として有効です。もちろん、契約書があるにこしたことは無いのです。しかし、たとえば日雇いの建設作業の場合など、「1日働いて○○○○円だけど、働いてみるか」と口頭で言われて、「よっしゃ」と一日働いて、それでその金額を現金でもらって仕事が終了するというようなことがいくらでもありますよね。そんな場合、たいてい契約書はありません。こんな場合でも労働契約は立派に成立しているのです。つまり、「口約束の労働契約」は有効な契約なのです。

 さて「口約束すら無いのに会社と労働者が労働契約を結ぶことがあるよ」というのが黙って示す労働契約、つまり「黙示の労働契約」です。

 これは、会社が自分の会社の社員でもない人を無理やり自社の社員として働かせたときに発生します。会社が、誰かを契約が無いにもかかわらず自社社員として働かせ、働いているほうもその実態を受け入れて異議をとなえずに働いた場合、「黙示の労働契約」が会社と労働者との間に発生するのです。

 契約もしてないのに無理やり働かせるなんて、そんなばかなことがあるのかと、首をかしげたくもなります。ところが、実は現在の日本の企業ではあちこちでこのような変な現象が起きているのです。

 業務請負で働きに来ているよその会社の社員を、自社の社員であるかのようにこき使うという場合がありますよね。請負会社の労働者に、自社の社員にしか使わせてはいけないような設備を使わせ、自社の部下であるかのようにあれこれと指図し、ミスをしたらこっぴどく叱責する、こんなこと、よくありますよね。このような場合、会社は日常の態度としてその人を自社の社員として扱っているのです。

 このような場合、会社は「うちの社員として働いてくれ」とはっきりとは申し込んでいないのにもかかわらず、実質的な日常の態度の中で「労働契約の申し込みをした」ということになるわけです。つまり「黙示の労働契約」が成立したということになるのです。

 請負契約の契約条件を破って自社社員としてこき使っておきながら、都合がわるくなると「君は契約書の上では正社員じゃないから」と差別してクビにするというようなことは、どう考えてもおかしいのです。

 請負の人を自社社員のようにこき使うことを、専門用語で「偽装請負」といいます。偽装請負があった場合には、その労働者を請負労働者ではなくて正社員として扱うべきだと、パナソニックPDP事件で大阪高等裁判所が判断したのは、このような「黙示の労働契約」という考え方があるからなのです。

 吉岡力さんは、「パナソニックPDPとのあいだで黙示の労働契約が成立していた」という大阪高裁の判断にもあるとおり、パナソニックPDPの正社員として職場復帰することを求めて闘っています。

 

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