原発が多い地域の出身者からの訴え
福島では、飯舘村に避難指示が出されることになりました。半径30kmの外にあるのですが、事故後すぐから高い放射線が観測されていたので、気になっていたところです。避難指示は遅すぎたのではないでしょうか。今さらなんて、おかしいですよね。
さて、今回の原発事故について、原発が多い地域の出身である人からの文が投稿されたので紹介します。
私は福井の生まれです。みなさんもご存知のように、福井には関西電力と日本原電の原子力発電所がたくさんあります。福井の原発で発電された電力は、地元では使われていません。主に大阪に供給されるのです。
私が小学生のころ、父親の車にのせられて、美浜原発を見に行ったことがあります。福井県の田舎である敦賀の、人気の無い敦賀半島の先端にある田舎の中の田舎というべき場所です。青い海と緑の山の中にコンクリートの無機質な建物がたっていたのは、現実感の薄いSFの世界のように感じました。
その美浜原発からさらに険しい山を越えた半島の先端の白木という集落には、その後、高速増殖炉もんじゅが建設されることになりました。
私の父親がもんじゅの建設に間接的に関わっていたことを知ったのは、私が大人になってからでした。
「原発には反対せないかんぞ。原発は悪魔に魂を売るようなものだ。」父親が真夜中に酒を飲みながら語ってくれたことがあります。
白木という集落には、もんじゅができるまではまともな道路が通っていませんでした。険しい山が海の間近にせまっている敦賀半島のその先端。その小さな漁村に住む人たちは、町にでるためには山を歩いて越えるか、船でいくしかなかったそうです。もんじゅができるということで、山をぶちぬいてトンネルが通り、白木の集落がやっと陸の孤島から解放されたのです。
そんな地元の人たちの苦しさにつけこんで、道路ができるかわりにもんじゅ建設に賛成するように誘導したというのです。それを父親は「悪魔に魂を売るようなもの」と言ったのでした。
福井の人間は、原発から放射能がずっと漏れ続けてきたことを知っています。何回も何回も放射能漏れ事故がおきているのです。原子力発電所の中では、放射能が漏れたことが問題になるのではなく、放射能漏れが発生したという情報が外部に漏れたことが問題になっていたのです。
ですから、今回の福島原発事故で大阪の人たちが放射能漏れをこわがって右往左往しているのを見ると、なんだかばかばかしくなってきます。これまでだって漏れてたんですよ。大阪にだって放射能が流れてきていたのかもしれないんですよ。みんな気付かなかっただけですよ。みんながすでに被曝者なのです。
福井では、本当は原発なんていやだと思いながら、なかなか反対できずに来たのです。もちろん、勇気をだして反対する立派な人はいたのです。もんじゅに反対する裁判を起こした人もいます。でも、福井の多くの人は原発のことになると黙り込んでしまうのです。本音では反対していても黙ってしまうのです。なぜなら、知り合いや親戚に原発で金をもらっている人がいるかもしれないからです。
福島の原発事故で、福島の人たちがどんなに辛い思いをしているか、涙がでてきます。東京や大阪の人も不安だと思いますが、地元の人間はもっと辛いと思います。
今回の事故は、なにげなく通り過ぎてはいけません。もう一度よく考え直す天が与えた機会なのです。原発の地元住民がまずは勇気をもって考え直すときです。これまで、福島や福井にありあまる金の力で原発を押し付けて、安全だ安全だとウソを百万回もついてきて電力の無駄遣いをあおってきた連中に、これからもだまされ続けていいのか、よく考えるべきなのです。
おかしいことに、水力発電所が止まっています。福井にも、山間の集落を水没させてまで作った水力発電所があります。そんな水力発電所は、稼動率が25%しかありません。四分の三の水力発電所はわざと動かしていないんです。なぜなんですか。無駄なダムはいりませんが、すでにあるダムの発電能力をなぜわざわざ使わないんですか。水力発電所をフルに稼動させれば、原発なんていらないのです。日本の発電能力はあまっていて、原発を無くしてもやっていけるはずです。
二酸化炭素を排出する火力発電の分は、現実的な計画に基づいて太陽電池発電に切り替えていけばいいのです。「原発はCO2減少できるクリーンなエネルギー」なんて、某有名俳優を使って宣伝してましたけど、ばかばかしくてしょうがありません。
どうか、都会に住んでいるみなさん、よく考えてみてください。原発の地元住民を押さえつけてきた抵抗しがたい力をはねかえすためには、都会に住んでいるみなさんの気付きが必要なのです。どうかお願いします。
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