福島原発事故・20ミリシーベルトの何が問題?
次のようなお問い合わせをいただきました。
福島では「20ミリシーベルト」が問題になっているといいますが、これはどういうことですか。
ミリシーベルトというのは、放射線被曝の単位です。一人の人が、一年間にこれ以上放射線をあびてはいけないという量は、日本ではこれまでは1ミリシーベルトだと決められていました。
原発で働く労働者だけは、一年間に50ミリシーベルト(五年間の合計は100ミリシーベルト)が上限だとされてきました。原発で働く人は、放射線被曝がどうやっても増えてしまうので、一般の人よりも被曝が多くても許容されるかわりに、原発手帳に被ばく線量を記入するなどして管理をちゃんとしようということになっていたのです。
ところが、今回の福島第一原発事故のあとで、政府は一般の国民の上限を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げると言い出したのです。子どもも20ミリシーベルトまでは被曝してもいいということにしてしまったのです。
福島の原発の近くでは、放射能がばらまかれたおかげで、今後一年間に1ミリシーベルトを上回る放射線を一般の人があびることになりそうだ、というのがその理由です。
これはおかしいですよね。1ミリシーベルト以上をあびることになりそうだと予想されるんだったら、それを防ぐための対策を立てるのが常識です。政府は、被曝を減らし被曝を防ぐための対策をたてるより、被曝を認め被曝を許すことで問題が回避できると考えたわけです。
内閣官房参与の小佐古教授(原子力安全学)は、「20ミリシーベルトが上限なんてゆるすぎる。原発労働者でも20ミリシーベルト近くの被曝をする人はほとんどいない。一般人、ましてや子どもに20ミリシーベルトを強いるのはヒューマニズムに反する。」と言って参与を辞任してしまいました。
福島で現実に問題になっているのは、実は学校の校庭や砂場なのです。放射性のセシウムなどが風にのってまきちらされ、地面の表面に付着しています。校庭や砂場の表面から放射線が出ているおかげで、子どもたちの被曝量が1ミリシーベルトをはるかに超えてしまいそうなのです。
ですから、福島県の郡山市では、子どもたちの被曝を減らすために、学校の校庭や砂場などの表面の土を削り取って土を入れ換え、放射能を除去する作業が行なわれています。学校としては当然の対策ですよね。
ところが、高木文科ダイジンは、「放射能除去なんて必要ない。よけいなことはするな」と機嫌が悪いのです。放射能除去をしなくていいと言っているのです。そればかりか、学校が独自に放射線量を計測することすらお気に召さないというのです。
こんな人たちが日本の政治をしているということが、まさに人災ですよね。
東北の地方紙「河北新報」が福島県知事をはじめ、地元の怒りを伝えています。
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コメント
お久しぶりです。
子どもは放射能に対して大人の10倍の感受性を持っていると言われます。
被曝許容量を1ミリシーベルトから20ミリシーベルト(2万マイクロシーベルト)もの高値に引き上げたことに本当に激しい怒りを感じます!!!
原発労働者の被曝労災の紹介を見てください。
http://blog.livedoor.jp/danketu_sokuhou/archives/51938177.html
確かに一度に大量の被曝をしない限り、急性障害は現れない。いわゆる枝野が言うように「直ちに影響はない」のかも知れません。
しかし、この資料によれば、累計50〜70ミリシーベルトで、何年か経ってから障害が現れている!!! 被曝労働者も、おおむね50ミリシーベルトを超えたあたりから体調が悪くなると言われている。 (原発は労働者を被ばくさせながら存在しているのです!だから、「原発なくせ!」という命をかけた要求と闘いは、労働組合の課題なんでですね!!)
子どもに年間許容被曝量が20ミリシーベルトという基準は、考えられない!!!
投稿: 越川江美 | 2011年5月 5日 (木) 22時35分
越川さん、コメントありがとうございます。
この国が悲劇的なのは、原発推進派が不真面目なことではないでしょうか。ウソばかりついて国民をだまして原発を推進してくるうちに、何が本当で何がウソなのかわからなくなっちゃったのだと思います。
20ミリシーベルトの被曝を子どもたちに強いることの恐ろしさを、政治の中枢の人たちにわからさなければいけませんよね。
投稿: みるめ | 2011年5月 5日 (木) 23時08分