仕事のストレスで胃潰瘍になったら労災?
次のような質問をいただきました。
仕事のストレスで胃潰瘍になってしまい入院しました。これは労災になりますか。
たいへん深刻な話です。「胃に穴があく」ほど働かされている人の話は、よく聞きますよね。私たちの経験上は、仕事のストレスによって胃潰瘍になるのは、まったくありそうなことなのです。本来は労災認定されるべきです。
しかし、胃潰瘍で労災認定が認められるのは、現実にはたいへん難しいのです。不可能とはいいませんが、たいへん困難な道であることは間違いありません。
業務上の精神的ストレスによる精神疾患は、労災認定の基準があります。うつ病や双極性障害や適応障害や不安神経症や統合失調症などは、精神疾患にはいっています。しかし、胃潰瘍は精神疾患の枠の中に入っていないのです。
労災認定基準でいう「精神疾患」は、あくまでも精神の病気のこととされています。ちょっと専門的になりますが、国際疾病分類第10版(ICD-10)で「Fのコード」がついている病名がその対象だとされています。
しかし、例外があって、「Fのコード」であっても「心身症(F45$)は労災認定の対象から除外する」となっています。「心身症」とは、精神的ストレスが原因で発生する身体疾患の病態のことです。精神的ストレスで下痢をする、めまいがする、喘息発作が起きる、胃潰瘍になる、などが心身症です。
ですから、精神的ストレスによる胃潰瘍は、現在の労災認定基準からははずれてしまうのです。
それでも、仕事のストレスで胃潰瘍になったから労災認定してくれと主張するのならば、業務上の精神的ストレスの大きさの立証に加えて、精神的ストレスから胃潰瘍を発症したとしか考えられないという医学的な立証を医師にしてもらわなければなりません。
胃潰瘍の原因には、ヘリコバクターピロリ菌など様々な要因がからんでいます。そのような要因を排除して、「精神的ストレス以外には原因が考えられない」というところまで立証することが必要になるのです。それができる医師に、残念ながら私たちはまだ出会っていません。
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