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仕事中のトイレの時間分を賃金から差し引く会社って、どうよ!

 ブログを読んでいただいている方から、次のような質問をいただきました。

私は女子で(レジ担当で労働時間内はずっと立ちっぱなし)パートとして雇われていて時給でお給料を頂いてます。平日の平均労働時間は5時間半なので休憩というものは頂いておらず(休憩を取るために終業時間が30分遅くなる為要らないといってあります。)
そのためトイレに行きたいときは近くに人がいれば伝えていっているのですが(所要時間は大体6分~10分以内)

大体一日に1、2回行きます。

本日こんなメールが上司から届きました。
『トイレは休憩です。お茶を飲みに行ったら休憩です。そういうものです。』
『休憩チェックノートに記載し休憩の修正を行ってください。』

つまりトイレにいくと労働時間から差し引かれてしまうのでトイレに行った回数(時間)分一日分の給料が減るということです。

いろんなサイト等で確認したけど
トイレは休憩扱いではなく休息扱いで労働時間に含まれるので給料は支払われると書かれているのがほとんどでした。

まるで私の上司(店長)はそれが一般常識で当たり前であるかのような内容のメールを送ってきましたが本当に世間一般常識で認められている行為で労基法にも違反していない当然の事柄なのでしょうか?


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 トイレに行く時間の分の賃金を差し引くというのは、なんというしみったれな会社でしょうか。トイレに行くことをいちいち申告させること自体が、セクハラだと感じる人も多いのではないでしょうか。あきれてものが言えませんが、こんなとんでもない会社がいたるところに存在しているのが今の日本の現状なのです。

 まず、仕事中にトイレに行ったからといって賃金をへらすことは、トイレに行くことに対してペナルティを科していることになります。人がトイレに行くことにペナルティを科すのは、違法なのです。

 いったい何という法律が根拠になるのかというと、まずは日本国憲法です。

憲法第25条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 トイレに行くとか、のどが渇いてしょうがない時に水を飲むとかいう生理的欲求は、無条件で保障されなければなりません。たとえ雇用契約によって仕事に縛り付けられている労働時間であっても、これは基本的人権として保障されなければならないのです。労働中であっても、人がトイレに行くのを邪魔してはならないのです。

 トイレにどれくらいの回数で行くかは、個人差がありますし、その日の体調によってもかわります。しかし、常識的に考えれば2時間くらいの間隔でトイレに行きたくなるのは普通のことです。ですから、質問をいただいた方のように5時間30分の労働時間であれば、その間に1回か2回トイレに行くのは、決して多すぎることはありません。そのような程度の回数のトイレの時間は、まちがいなく労働時間に含まれるのです。

 労働基準法ではどう書いているでしょうか。

労基法第34条の3 使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

 これはどういうことか、少し解説がいりますね。休憩時間とは、労働時間の間にはさみこまれる、仕事をしなくてもいい時間のことをいいます。この条文が言っているのは、休憩時間というのは、その時間に労働者が何をするのか完全に自由でなければならないということなのです。

 逆に言うと、トイレに行くだけの最低限度の時間というのは、労働者はトイレに走って行って走って戻ってこないといけないので、自由に使える時間ではないから休憩時間にはあてはまらないのです。

 日本の労働基準法では何分以上の時間なら休憩時間と認められるのかは書いてありません。しかし、5~10分程度の短時間の休息はトイレに行くくらいしかできることがないので、休憩時間とは認められないというのが、労働基準法解釈の定説となっています。

 この点、ドイツの労働基準法では、「休憩時間とは15分以上の休息でなければならない」とはっきりと書かれています。

 トイレ休憩ではありませんが、夜の泊まり勤務中の仮眠時間が休憩時間なのか、それとも労働時間なのか、という裁判がありました。休憩時間であるならばその時間は賃金が支払われませんが、労働時間であるならば賃金が支払われます。

 2002年2月に最高裁判所が出した判決は、「仮眠時間も労働時間であって賃金を支払わなければならない」というものでした。

 深夜に仮眠をとるのは人間の生理的欲求からいって当然のことです。「業務をしていないから」といって仮眠時間の分の賃金を払わないのは不当だということなのです。仮眠していても臨時の仕事が発生すれば起こされるというのであれば、立派な労働時間なのです。

 この例から考えても、ほんの数分のトイレの時間の賃金を差し引くと言っているような会社の主張が、いかにとんでもないものかわかるのではないでしょうか。

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