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独裁者を笑え!「ディクテーター・身元不明でニューヨーク」

 おバカでお下品な爆笑コメディ映画「ディクテーター・身元不明でニューヨーク」を見てきました。すごい猛毒。政治的な毒に耐性の無い人は見ないほうがいいです。

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 主人公は、北アフリカの架空の国「ワディヤ共和国」のディクテーター(独裁者)・アラジーン将軍様。父親の世襲でこの国の支配者となったアラジーン将軍様は、生まれながらの全知全能のパワーでワディヤ共和国を統治していました。将軍様は生まれたときから立派なヒゲがはえていました。このヒゲこそが全知全能の証なのでしょうか。

 全てを決定する権限はアラジーン将軍様にあります。ちょっとでも将軍様の機嫌をそこねた人物は、たとえ側近であってもすぐに死刑になります。将軍様は首を切るしぐさをするだけでいいのです。気に入らないヤツは親衛隊によって即刻つれ去られていってしまいます。

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 アラジーン将軍様は全知全能なので、何をやっても一位です。陸上競技でも、将軍様はトップの成績です。なぜなら、将軍様はフライングしても大丈夫だし、それでも追いつこうとするランナーは撃たれてしまうからです。

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 アラジーン将軍様は核兵器が大好きなのですが、ミサイルの形が気に入らないという理由で核開発の責任者も死刑にしてしまいました。おかげで、なかなか核ミサイルができあがらないのです。

 しかし、国連やアメリカは大量破壊兵器を持っているのではないかという疑いをかけ、アラジーン将軍様がニューヨークのサミットで「核は持たない」と釈明しなければ総攻撃をすると脅かしてきました。

 アラジーン将軍様は即刻決断です。「来いと言うなら行ってやる。ニューヨークに乗り込むぞ!」

 ラクダに乗った将軍様の行進に、ニューヨーク市民たちは「独裁者は退陣しろ!」と罵声をあびせます。しかし、将軍様はそんなことはおかまいありません。

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 ところが、その夜おそろしいことが起きます。アラジーン将軍様は何者かにホテルから拉致されてしまったのです。そして、なんとトレードマークのヒゲをそられてしまうのです。

 ホームレスのような身なりで見ず知らずのニューヨークの町に放り出されたアラジーン将軍様。宿泊していたホテルにもどっても、誰もヒゲの無い将軍様を本人だとは信じてくれず中に入れてくれません。

 警官にひどいめにあっているアラジーン将軍様を救ったのは、難民支援をしている超博愛主義者の人権活動家の女性、ゾーイでした。民主主義が大好きで独裁者が大嫌いなゾーイに、将軍様は自分が独裁者本人だと名乗ることをためらってしまいます。

 そして、ゾーイの経営する自然食品店で生まれて初めて「働く」という経験をした将軍様。これまた生まれてはじめて、恋に落ちてしまうのでした。

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 テレビに映ったサミット会場では、将軍様の影武者が「三日後にワディヤの民主化憲法を発表する」としゃべっています。これは民主化に隠れた誰かの陰謀です。恋に浮かれている場合ではありません。将軍様は民主化阻止のためにゾーイの店のケータリングのスタッフとして会場にもぐりこむことを計画するのですが……

 という感じで、最初から最後までノンストップなコメディ映画でした。wink

 しかし、現実にこの世の中に存在する独裁者の愚かさをリアルに表現し、徹底的にバカにしているのが抜群に面白かったのです。

 主演のサシャ・バロン・コーエンのぶっとんだ演技もすごかったですが、アラブの春・ジャスミン革命が始まるよりも前に撮影がはじまり、革命の進行と共にシナリオも微妙に変えざるを得なかったという時代の先をいった映画です。イタリアをはじめ世界中ですごくヒットしているというのもうなずけます。。

 「独裁者を許すな」と叫ぶアメリカの言う「民主主義」。イラク戦争で無実の人たちが大量に殺害されたことを見れば、偽者であることは世界中が知っていますよね。「独裁はすばらしいぞ。1パーセントの金持ちが、もっと金持ちになることができる。君らも本当は独裁をしたいんじゃないか?」と将軍様はアメリカの金持ち政治家の本心を見抜いてしまいます。

 中国の政治家がニヤニヤしながら登場し、「民主化支援のため協力する」と申し出てきますが、実は彼らも石油の利権がほしいだけです。本当にいやらしいやつらとして描かれています。

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 この映画、シネコンで上映なのに大阪では二週間で上映打ち切りです。日本でヒットするのは難しいかもしれません。英語のギャグを日本語に翻訳するのも難しいのですが、独裁者を笑い飛ばすだけの余裕が日本人にはまだ足りないような気もします。

 この映画は、独裁政治がそう簡単には無くならないことも表現しています。ですから、民主化運動の夢を軽く考えている人には受けが悪いかもしれません。民主化が長い長い道のりである事は、お隣の韓国の歴史を見てもわかることですよね。忍耐が必要です。

 また、表面的な人権擁護運動にも鋭い批判の目を向けています。ですから、いわゆる人権派の人たちは気分を害するかもしれません。

 現在の日本では、「独裁者の登場を待ち望む」人たちが増えているように感じます。自民党がつぶれて政権交替し、その民主党が全然ダメだったことに失望し、その閉塞感が強いスーパーヒーローの登場を求めているのではないでしょうか。

 しかし、やっぱりこの映画を見ていると、この世に独裁者はいりません。「政治は独裁だ」とか「教育は独裁だ」とか言って、独裁者になりたいと必死にがんばっている某政治家の人たちにこそ、見てほしい映画でした。

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