精神疾患の労災認定基準について質問をいただきました
ブログを見ていただいた方から、次のような質問をいただきました。
こんにちは。私も会社でパワハラを受けています。私が受けているのは上司からの無視です。もう2ヶ月も続いています。最初は目をあわさない程度だったんですが、今ではほとんど私に話しかけてきません。引き換えに私以外の部下にはこれでもか、とコミュニケーションをとっています。さすがに1週間もすると皆も分かってきます。私が無視されていることに。しかし私に係わって同じ目にあいたくないんでしょう、同調するように私に話しかけてこなくなりました。来週病院に行くつもりです。そこで質問なのですが、精神疾患で労災となるとありますが、どのような判断基準なのですか(期間?症状の重さ?)?教えてください。
職場でつらい思いをされて、たいへんだったと思います。
精神疾患で労災が適用されるための判断基準なのですが、たいへん複雑です。そして、かなりハードルが高いのです。昨年度の場合、精神疾患で労災申請した人のうち四人に一人しか認定されていません。これは、認定基準をよくわからないままに申請したり、立証がうまくできない方が多いからだと思われます。
まずは、発病した病名が精神疾患である事、というのが前提条件です。精神疾患になると「吐き気」とか「頭痛」とか「不眠」とかがまずはあらわれることが多いのですが、これらの身体症状だけでは精神疾患かどうかわかりません。「うつ状態」とか「不安障害」とか、はっきりと精神疾患である事がわかる診断がつくことが必要になります。
「心療内科でも精神疾患の労災は可能ですか」という質問を受けることもあります。不可能ではないのですが、心療内科はあくまでも精神的ストレスによる身体症状に対する診療を行なうのが基本なので、労災認定をしてもらうのなら精神科の医師の方が妥当だと思われます。
症状の期間や重さには、特に判断基準は設けられていません。ただ、現実には仕事を休まなければならないほどのはっきりとした症状が出ていなければ、労災申請の対象にはならないのではないでしょうか。精神科医師による「休業が必要」という診断書が出るということです。本格的な精神疾患になれば、3ヶ月間とか半年間とかの休業が必要になります。そこまでいかなくても、たとえ一週間というような短期間でも休業が必要なほどの状態であったということが必要になると思います。
そして、労災となるための判断基準は、「発病日からさかのぼっておおむね6ヶ月間の間に、職場で業務上の強いストレスがあった」ということです。
「職場でのひどいパワハラやいじめ」は、業務上の強いストレスとされて労災認定の対象になります。しかし、「ひどくないパワハラやいじめ」では労災認定はされません。パワハラやいじめが「ひどかった」ということを説明できなければ、労災には認定されません。
なにが「ひどく」て、なにが「ひどくない」のか、ここで問題が発生します。
いじめられている本人にとっては、どんなささいなことでも心にズキッと響く「ひどいパワハラ」なのですが、労災保険にとってみれば「本人がひどいと感じていた」ことでは判断できず、「誰が見てもひどい」という説明が必要になるのです。
さらには、「ひどいパワハラだったという証拠を持ってきてください」と言われます。質問の方の場合、「上司から無視された」というパワハラですが、これは証拠が残りにくいのが現実です。どういう証拠をもっていけば納得してもらえるのかをよく考えないといけません。
あと、労災認定の申請書には会社の印鑑がいります。しかし、職場のパワハラで精神疾患になった場合は、多くの場合は会社が印鑑を押すのをいやがります。これには解決法があるのですが、その問題をどうクリアするのかも大きな関門になってきます。
いかがでしょうか。こんな感じですので、精神疾患の労災認定をお考えの方は労災認定に詳しい専門家の方に相談してマンツーマンでアドバイスしていただくほうが良いのです。お住まいの地域によって労災認定の状況も微妙に違うので、お近くの専門家を探すのがお勧めです。
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