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建設現場でケガをしたのに労災にしてくれない

 次のような相談をいただきました。

 建設業の職人です。知り合いの会社にちょっと手伝ってくれと頼まれて建設現場に出ました。そこでひどいケガをして入院するはめになったのです。会社はいつまでたっても労災の手続きをしてくれません。労災にはならないのでしょうか。

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 建設業の事業所にいつもは雇われていない職人さんが、日雇いみたいな感じで建設現場でアルバイトをすることは、よくあることです。そして、危険な現場でケガをすることも珍しくないでしょう。

 どんな契約で働いていたにせよ、仕事中のケガなのですから、本来は労災になるはずです。

 しかし、仕事の契約が「雇用契約」であったのか、「請負契約」であったのかで労災の手続きが異なってきます。そこに落とし穴があったりするので、注意が必要です。

 雇用契約であった場合、仕事中のケガは無条件で労災になります。雇用契約とは、「何月何日の何時から何時までどこそこで仕事・業務内容は現場で指示が出る・それで一日あたりいくらの日当」というような契約です。

 たった一日間のアルバイトであっても、雇用契約は雇用契約です。文書での雇用契約書が無くてもかまいません。口頭契約であっても、その人が出勤して日当をもらったという事実があれば雇用契約であることは間違いがありません。

 「うちの会社は労災に入ってないんよ」などとしらばっくれる会社が時々ありますが、これは法律に違反していることになります。一人でもアルバイトを雇う会社は労災保険に加入する義務があるのです。たとえ、工事請負のために臨時で起業された有期設立の会社であっても、労災保険加入の義務はまぬがれません。

 例外的に、労災保険に加入するかしないかを自由に選択できる企業があります。農業・林業・畜産業・養蚕業・水産業の零細な家族経営企業です。これ以外は強制加入なのです。建設業は、あきらかに強制加入の対象です。

 もしも会社が労災保険に加入していないと言うのなら、今すぐに加入してもらわなければなりません。労働者がケガをしてからあわてて労災保険に加入するのはかっこ悪いことですが、それはこれまで加入の義務を怠ってきた会社が悪いのです。会社の都合にかかわらず、労働者には労災保険を利用する権利があるのです。

 もし契約が「雇用契約」ではなく「請負契約」であった場合は、話が難しくなります。請負契約とは、「建設工事のこの部分をまかせた。出来上がりのしめきりは何月何日だから、それまでに完成させてくれ・納期が守れる限りは、いつ仕事をしようが自由だ・工事が完成したら請負料を支払う」というような契約です。

 請負契約の場合は、働く人が個人事業主となります。個人事業主は労働者であり社長でもあるという立場なので、労災保険には自分で加入の手続きをする必要があります。

 これは「ひとり親方の特別加入」と呼ばれている労災保険加入方法です。

 ひとり親方の特別加入は、「ひとり親方の組合」に加入することを通じて行なうことになります。

 残念ながら、なかまユニオンは「ひとり親方の組合」の認可をもらっていませんので、なかまユニオンを通じて労災の特別加入をすることはできません。

 実際の建設現場では、請負という名目だけれども実際は雇用契約で、現場監督の指揮命令に基づいて働かされているというような実態があったりします。いわゆる「偽装請負」です。

 偽装請負を無くし、労働現場での事故やケガへの補償がしっかりとなされるようにしていかないといけません。

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