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「資本主義の安楽死」を訴える本がベストセラーに

 「資本主義の終焉と歴史の危機」という本が発行部数10万部を突破し、ベストセラーとして本屋さんに平積みになっています。

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 この本は、経済学者の水野和夫さんが書いたものです。水野和夫さんは、別に労働組合の顧問をしているような方ではないのですが、独特の経済分析から労働者の非正規化に反対し、労働者の収入をアップさせることができなければ経済は破綻するとおっしゃっているのです。

 水野和夫さんは、そもそも資本主義そのものが死にかけていると言うのです。北斗の拳ではありませんが、「おまえは、もう死んでいる!」と資本主義に引導を渡すのです。

 資本主義というのは、商売で儲けた利潤を次の投資にまわし、さらに大きな利潤を実現するという社会システムです。ですから、資本主義は経済成長と密接に結びついています。どんどん儲けていく資本主義が生き残るためには、経済成長は必ず必要なものなのです。

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 上のグラフからもわかるとおり、日本の経済成長率はどんどん低下して、ほとんどゼロに近くなっています。水野和夫さんがおっしゃるには、経済成長を最も正確に反映する数字は国債の利率だそうです。日本の国債の利率はもう20年間も2%を下回ったままなのです。

 水野さんは、過去に封建主義が行きづまって近代資本主義が発生した16世紀の経済の分析から、21世紀の現代も資本主義経済が行きづまり、新しい経済・社会体制への転換の時をむかえているのだと言うのです。どうせ終わりを迎える資本主義なのだから、ソフトランディング、つまり安楽死を考えたほうがいいと言うのです。

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 金融資産、つまり貯金を全く持っていない人の割合は、1987年にはたったの3.3%でしたが、今は31%にのぼります。日本国民の3人に1人はまったく貯金を持っていないのです。貯金が無いということは、本人からみたら生活が不安定で将来の不安があるということです。バブルが崩壊し、新自由主義的な政治を日本政府がするようになってからというものの、日本人の生活は悪化をたどっているのです。

 資本主義というのは、何かを作ってお客さんに買ってもらってはじめて利潤を得られるのです。ところが今や、国民の財布がすっからかんで貧困なので、誰にも商品を買ってもらうことすらできない状況なのです。つまり、資本主義の死です。

 「日本人が買ってくれないなら、アフリカの人に買ってもらえばいいのさ。アフリカはこれから市場が拡大するのさ」と言う人がいます。水野さんは、このような主張がたいへん先が読めていない目先だけの思いつきでしかないと批判します。

 アフリカが経済発展するということは、アフリカの国内で生産が増加するということです。アフリカの人が、たくさん日本製品を輸入をしてくれるというような、甘い期待をいだくことはできないのです。

 この本は、たいへんお勧めです。労働組合の運営に関わる人、企業経営を真剣に考える人なら、必ず読んでおいたほうがいいと思います。ノスタルジックな「左翼政党」なんかよりもはるかに痛烈に資本主義社会を分析しているように思いますよ。

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