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コンビニで働いて出くわす不条理さ・漫画「ニーチェ先生」

  コミック「ニーチェ先生」が話題になっています。

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  就活をいくらがんばっても就職先が決まらない松駒君は、コンビニで深夜のアルバイトをしています。そこへやってきた新人がニーチェ君なのです。究極の「さとり世代」の割り切り方で不条理な業務を淡々とこなす新人を、松駒君は内心「ニーチェ先生」と呼ぶのです。

  このコミックがヒットしているのは、コンビニという存在そのものの危うさ、そこでアルバイトをすることの不条理さをリアルに描いているからだと思います。

  どんどん新規オープンしては次々につぶれていくコンビニ。それは、現在の日本の資本主義経済の姿そのものです。日常品を販売するのがコンビニですから、そんなに儲けは出ません。しかし、本部に上納しなければならない額は相当なものです。

  そのコンビニでも最もきつい仕事をこなす深夜アルバイト。どんなひどい難癖をつけられても、「お客様は神様です」と我慢するように教育されているのです。たいへんな感情労働です。

  ですから、「お客様は神様だろ」と言われて「神は死んだ」と言い返すニーチェ先生の姿が新鮮に感じられるのです。日ごろ我慢に我慢を重ねて仕事をしている人にしかわからないブラックな笑いですよね。

  ニーチェは、「神は死んだ」という名言で有名な哲学者です。資本主義が発達してきて古いキリスト教的世界観が通用しなくなった時代に、それでも古臭い宗教政治にしがみつく権力者や宗教指導者たちの不条理さを批判しようとした哲学者です。時代に合わなくなった宗教体制の不条理さに、「神は死んだ」というさらに不条理な言葉で対抗していったわけです。

  ニーチェは精神障害を患っていた人で、その考え方には不条理なところがあります。「神は死んだ。私たちが殺したのだ。人間のあまりの醜さに同情したあまりに神は死んだのだ。」などと言いう理屈のたてかたは、なかなか病的です。

  しかし、ニーチェを精神障害に追い詰めた原因の一つは社会のもつ不条理な構造であったわけで、精神的ストレスが少ない社会を作っていくことでしか問題は解決しませんよね。

  「ニーチェ先生」では「神は死んだ」という言葉は出てきますが、それ以上にニーチェの難解な世界観が出てくるわけではありません。どちらかというと仏教的な虚無感で世相を切っていくので、そのあたりも馴染みやすいかもしれません。別に、おすすめの本というわけではありませんが、職場で話題になっているコミックです。

 

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コメント

私の中では、神は生き生きと生きています。なぜ、神は死んだなどと思う人が多いのか、悲しいことです。

投稿: 匿名希望 | 2015年2月11日 (水) 22時00分

匿名の方、コメントありがとうございます。確かに、熱心なクリスチャンの方や熱心なムスリムの方と話していると、その方々が神と対話しながら毎日を生きていることがよくわかります。それはより良く生きる指針を持っているということだと思いますし、すばらしいことです。
「お客様は神様だ」という言葉も、自然な心の動きとしてそう思えるのなら良いのですが、無理やりそう思い込ませようとするのはいかがなものかと思います。「お客様は神様だ」と言いながら、実は客が持ってくる金のことを神格化しているのではないかと疑いたい時も多いのです。
資本主義が金を神だと崇拝するようになってしまったので、そこへの反発から「神は死んだ」と思う人も増えてきたのではないでしょうか。たしかに悲しいことです。

投稿: みるめ | 2015年2月12日 (木) 21時30分

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