「大阪都構想」市民の反対多数で否決・真の改革とは
5月17日、大阪市で特別区設置協定(大阪屠構想)に関する住民投票が行われました。
テレビの開票速報を見ていたら、反対と賛成が接戦。どちらになるのか全く分からない状態で、それでも開票率81%の時点で「賛成」がいまだに多い状況であるにもかかわらず「反対多数確実・都構想否決」というテロップが流れました。
大阪市内でもっとも人口が多い平野区の開票作業がもっとも遅くまで時間がかかり、その平野区で反対が多数だったせいで、このような状況になったようです。
投票率は66.83%。大阪市民の3分の2が投票に行ったわけです。そして賛成が69万4844票、反対が70万5585票と、反対が1万票ほど上回って、反対多数の否決となったわけです。
ということは、大阪市民の3分の1が賛成し、3分の1が反対し、3分の1が棄権したということになります。
では、この3分の1の棄権の意味を考えてみたいと思います。
事前にマスコミが行った世論調査で、投票に行くか行かないかと、賛成か反対かを調べたものがあります。
すると、投票に行くと答えた人の中では賛成より反対がちょっとだけ多いという結果になっていて、実際の開票結果と合致しています。
そしてじつは、投票にいかないだろうと答えた人は、半分以上の多数が反対という意見を持っていたのです。
どんな投票でも、棄権は消極的反対だと言われます。今回の住民投票でもそうだったわけです。大阪市分割なんてばかばかしくて反対だから投票なんか行く気にならないよ、そういう人がたくさんいたということです。政治家たちのよくわからない議論につきあってられないという、ごく普通の生活に忙しい人たちの感じ方ですよね。
そうすると、実際の大阪市民の世論で言えば、「賛成」が3分の1、「反対」が2分の1、「賛成か反対かわからない」が6分の1と、おおざっぱにとらえていいのではないでしょうか。
ですから、「僅差で都構想否決」という報道はあたっていない気がします。「あきらかに反対多数だったが、投票では僅差しか現れなかった」というのが正確でしょう。
では、次に地域ごとの賛成・反対の動向を見てみましょう。
賛成多数だったのは、大阪の経済の中心でありJR大阪駅がある梅田・キタ地域を含む北区と、難波・心斎橋などミナミの繁華街のある中央区、そして高級な高層マンションが立ち並ぶ地域です。比較的お金持ちが多い地域です。
反対多数だったのは、新湾岸区になると想定されていた湾岸の地域、そして新南区になると想定されていた住宅地域です。比較的、低所得層が多く住む地域です。
大阪市を分割すれば、低所得層が多い湾岸区や南区は財政破たんする危険が高いと言われていました。その危機感が、投票結果にもあらわれました。
これを見て振り返ってみれば、やはり大阪市の5分割という構想は貧困地域の切り捨てという面が大きかったのではないでしょうか。貧困地域は切り捨てて、金持ち地域だけが繁栄する、それは「改革」と言えば「改革」なのですが、あまりにも冷酷な改革です。
貧困地域を切り捨てて「ワンおおさか」だなんて、よく平気で言えたものです。なんだか背筋がぞっとしますよね。
「貧困地域の高齢者が反対したおかげで都構想がとん挫した。高齢者はけしからん。」などと世代間対立を煽動して騒いでいるヤカラがいますが、常識的な敬老の精神を持たないのかと、びっくりしてしまいます。
とりあえず大阪屠構想は無くなったわけですが、問題は終わったわけではありません。
市民の3分の1が、「大阪市は無くなっちゃっていいよ」という意思を表示したわけで、改革の必要性は待ったなしです。
「改革か、現状維持か。」という論調で語るニュース解説員が多いのですが、そんな2項対立的な単純化では何の解決策もでてきません。「改革」にも様々な内容があって、改革案は一つではないからです。「金持ちがもっと金儲けをするための改革をしよう」というネオリベ経済学者の改革論と、庶民が痛切に必要としている生活改善のための改革とでは、180度正反対を向いているのです。
私たちは、「大阪屠構想」のような浮わついた改革案では無く、庶民が納得できる改革を求めていきます。橋下市長のような独裁者の登場を待ち望んでいるようではダメなんですよ。誰かにおまかせする改革がうまくいくわけがありません。改革は、自分たちの手と足と口と行動でつかみとるものです。
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コメント
大阪市民の半分が都構想には反対だったということ納得がいきました。4票の計算違いがあったので不正投票だからやりなおせとヘイトが騒いでますが、ほっておきましょう
投稿: | 2015年5月20日 (水) 22時44分