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映画「華氏119」・水道を民営化したら、こんなことも起きるのか!

 マイケル・ムーアの映画「華氏119」を見てきました。アメリカのトランプ大統領に対して、ムーアが正面から突撃した最新のドキュメンタリーです。

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 今、DA PUMPのUSAがヒットしてますよね。いいねダンスを踊る人で盛り上がっています。アメリカンドリームの国、USAを歌った歌です。ところが、ところが、「アメリカンドリームは死んだ」と、本国アメリカでは言われているのです。言っているのは、ドナルド・トランプ大統領その人です。

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 American dream is dead! (アメリカンドリームは死んだ)

 トランプ大統領が演説で言った言葉です。

 アメリカンドリームとは何か、それを象徴するのが、自由の女神です。

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 自由の女神の足元には、一つの詩が書かれています。アメリカ建国の精神を書いた詩です。

" Give me your tired, your poor,

Your huddled masses yearning to breathe free,

The wretched refuse of your teeming shore.

Send these, the homeless, tempest-tost to me,

I lift my lamp beside the golden door!"

November 2, 1883

私が受け入れるのは、疲れた人、貧困にあえぐ人、

自由を切望しながら身を寄せ合う民衆、

他国の海岸で惨めに拒否されるたくさんの人々彼らをどうぞ、わたしのもとへ。

嵐にもまれて身の置き所も無い彼らを、

わたしはここで,黄金の扉の前で、

明かりを持って待ち続ける!

1883年11月2日

 

 つまり、貧困や戦争や独裁によって難民となった人たちがここにくれば自由が得られるのだと、言っているのです。それがアメリカンドリームです。

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Get them out of here! (奴らをつまみだせ!)

 トランプ大統領はしょっちゅう叫びます。「メキシコ人をつまみ出せ!」と叫んでメキシコとの国境に巨大な壁を建設していますし、政敵である「民主党員をつまみだせ!」と叫んで集会から異論を唱える人を追い出すこともしょっちゅうです。

 内戦状態の中米のホンジュラスから大量の難民が押し寄せているのですが、彼らに自由を与えるどころか、追い出そうとしているのです。

 トランプ大統領によって、アメリカンドリームは終わったのです。

 では、トランプ大統領はアメリカンドリームを終わらせ、アメリカをどんな国に変えようとしているのでしょうか。

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 それは、アメリカのミシガン州のフリントという町で起きました。町の水道水に発生したとんでもない事件です。この町の近くにはヒューロン湖という大きな湖があります。昔から、この町ではヒューロン湖から水をひいて水源にしていたのです。なんの問題もありませんでした。

 ところが2010年、ドナルド・トランプの友人である大富豪で共和党のリック・スナイダー氏が州知事になってから雲行きが怪しくなりました。緊急事態法によってフリント市の行政権限を停止させたスナイダー知事は、「金のないフリント市に良質の水はもったいない」と、水道の水源を変えてしまったのです。

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 スナイダー氏はこれまでのヒューロン湖からの水道を止めてしまいました。そして、フリント市を流れるフリント川から水をひくように指示したのです。

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 フリントは、自動車大企業であるGM(ジェネラルモータース)の大工場があります。フリント川は工場排水で汚染されていました。それでも水を十分にきれいにする上水道施設を作っていれば、問題は起きないはずでした。しかし、スナイダー知事はそもそも上水道施設にかける金をけちるために水源変更を行ったので、不十分な対策のままで川の水が水道管に流れ込んだのです。

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 家庭の水道の蛇口からは、とんでもない臭いにおいのする汚れた水が流れ出るようになりました。

 きったないですよねえ。こんな水が出たら、誰でも即座に水道局に電話しますよね。しかし、フリントの市民が水道局に電話しても、まったくとりあってもらえなかったのです。

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 市民たちの体調に異変がおきました。下痢、皮膚炎、脱毛、さまざまな症状が出ました。細菌感染による死者まででました。

 すぐに、水道水から高濃度の大腸菌が検出され、水道水は沸騰させてから飲むようにという指示がでました。しかし、沸騰させても汚染がほんとうに取り除けるのか、不安は消えませんでした。

 やがて、体調不良を訴えて病院を受診した子どもたちの血液から、鉛が検出されるようになりました。しかし、検査技師は検査結果を改ざんするように行政からの圧力を受け、公開することができませんでした。

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 ついに、ミシガン大学の研究チームが真相を発表しました。やはり、高濃度の鉛が水道水に含まれていたのです。水源があまりにも汚染されていて腐食性があり、水道管の内側が溶けてきて鉛が溶けだしたというのです。

 アメリカの国の定めた環境基準では、飲料水の中の鉛の濃度は5ppb以下であることになっています。ヒューロン湖の水を引いているデトロイトでは2.3ppbと、これを下回っています。ところが、フリントの水道水は平均でも27ppbでした。158ppbという数字がでることも珍しくはなく、最高では13000ppbという値まで出たのです。これでは工業廃水です。

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 やがて、フリント市にあるGMの工場で、水が汚いために自動車の部品が腐食するという事件まで発生しました。当然、大企業GMはスナイダー知事に改善を要求しました。すると、スナイダー知事は、GMの工場だけを水道管をつなぎかえて元のヒューロン湖の普通の水道に戻したのです。

 信じられません。一般市民の水道は、汚染されたままで放置されたのです。市民たちが役所におしかけても、無視され続けました。

 やがて、オバマ大統領が騒ぎを聞きつけ、フリント市にやってくることになりました。市民たちは、オバマ大統領なら問題を解決する権限もあるし、これで大丈夫だと思い、喜びました。

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 ところが、オバマ大統領はなんと、みんなの前でフリントの水道水を飲んで見せたのです。飲むと言っても唇を濡らす程度でしたが。これはオバマ大統領による「安全宣言」のパフォーマンスでした。

 失望が町をおおいました。

 このあとに行われた大統領選挙で、オバマ氏の民主党がトランプ氏に敗北したのは、この時の安全宣言パフォーマンスが人々の失望を呼び起こしたことも原因にあったのです。

 それにしても、フリント市のように財政の厳しい市からはきれいな水道を取り上げ、市民に汚水を飲ませればいいという考え方は、あまりにもひどすぎます。でも、これが「水道民営化」ということなのです。

 日本でも水道民営化法案が12月6日に可決・成立してしまいました。本当に恐ろしいことです。

 (続く)

 

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