12/15なかまユニオン結成20周年記念講演会・新たな課題にGO!
12月15日、なかまユニオン結成20周年記念講演会が大阪市内で開催されました。
講演会では、中京大学教授の大内祐和先生にお話をしていただきました。
大内先生は、奨学金問題とブラックバイト問題に取り組んでいらっしゃいます。30年くらい前まで、奨学金というのは「育英会」というところが出していて、無利子が当たり前でした。1984年に育英会法が改悪され、「有利子枠」というのができました。それ以来、無利子枠は増えていないのに有利子枠は10倍にも増えたのです。
大内先生によると、「奨学金」というのは外国では「給付」、つまり返済の必要が無いのが当たり前なのだそうです。
英語で「奨学金」は「scholarship」ですが、これは奨学金給付のこと。返済が必要、なおかつ利子までつく日本の奨学金は英語なら「loan」と表現するしかなく、日本の「有利子奨学金」は、国際的には奨学金とは認められない制度なのです。OECD加盟国では、17か国ではそもそも授業料が無料だし、「有利子奨学金」なんていうものがあるのは日本だけなのです。
「無利子奨学金」の枠が狭いおかげで、本来なら「無利子奨学金」をもらう資格のある人でも、「無利子奨学金」をもらうことができません。
おかげで、奨学金の返済がいつまでたってもできなくて苦しいという人が、日本ではたくさんいるのです。これは、日本の将来にかかわる問題です。庶民の生活レベルにかかわるだけではなく、産業のレベルの水準にも影響します。国のありかたの問題です。
奨学金の返済がきついおかげで、在学中からバイトをするのが当たり前になっています。おかげで、「学生の学業を妨害してでもこきつかえばいい」という「ブラックバイト」が日本では問題になっているのです。
労働基準法を無視してバイトを低賃金で働かせることもあるし、「バイトのシフトがきついせいで授業に出ることができない」、こんなことが当然になってきているのだそうです。これでは、何のための大学進学なのかわかりません。
大内先生は、ブラックバイト対策弁護団や奨学金問題対策全国会議を結成して、困窮した被害者の相談と対策に奔走されています。
では、どうしたらいいのか。大内先生は、奨学金はすべて「給付型奨学金」にすべきだとおっしゃいます。
では、その財源はどうしたらいいのか。
大内先生は、お金は有るところにはムチャクチャあることを指摘します。野村證券が出した純金融資産保有額のデータによれば、日本の富裕層122万世帯は、272兆円の金融資産を持っているのだそうです。
人間は、どんなに無駄遣いをするにしても限界があります。使っても使い切れないくらいの資産が富裕層のところに眠っているのです。
では、なぜこんな驚天動地の格差が発生してしまったのか。原因があるのです。
「日本の所得税は累進課税になっていて、収入が増えるほど税率が高くなる」、庶民は誰もがそう思ってますよね。ところが、実は所得が1億円を超えると、逆に税率が下がるのです。「所得税の減税」を安倍総理大臣は行いましたが、実はそういうことだったのです。
こんなの知ってました?
税金の制度がこうなっているおかげで、ある程度以上の高所得者のところには、自動的にお金がたまる仕組みになっているのです。
大企業の内部留保も膨大です。「内部留保」とは、企業の持っている資産から、借金とか将来支払わねばならない予定のものとかを全部差し引いても、それでも残っている資産のことです。400兆円もの金が、使い道が無くて眠っているのです。
こう考えると、財源はいくらでもあるわけです。日本の税金の制度の基本設計を改革することで、財源を作ることができます。
大内先生は、奨学金を全て「給付型奨学金」にするのが基本だとしても、それだけでは足りないと感じていらっしゃいます。これまで奨学金をもらって高い利子の返済に困っている人が、莫大な数に上るからです。
大内先生は、「奨学金債務の帳消し」も併せて求めていきたいとおっしゃいました。「もう、返さなくていいよ」ということにしようというわけです。つまり、過去にさかのぼって日本の奨学金制度を世界各国と同程度の水準にしましょうということなのです。
オープニングは月桃の花歌舞団のエイサーです。エイサーは沖縄のお盆に踊る踊りで、祖先の霊を迎え、霊を送る時に踊ります。それは慰霊の意味合いを持ちます。沖縄の守り神である竜神を祀る聖なる海辺に汚い土砂が投げ込まれたという事件もあり、傷つけられた沖縄の心を伝えるかのように、大太鼓の音がズンッズンッと響きます。
ローストビーフ、煮豚、バンバンジーなど、なかまユニオン恒例の手作り料理も登場します。
映像作家のオ・ソヨンさんです。なかまユニオンは韓国の労働組合との交流を盛んにやってきました。企業のほうが国境を越えて展開している状況では、労働組合も国境を越えて連携する必要に迫られるからです。オ・ソヨンさんは、そんな交流を動画におさめ、ドキュメンタリー映画を作ってきました。
韓国の希望連帯労働組合のチェ・オス組織局長です。希望連帯労働組合では現在、携帯電話会社であるLGU+で、下請け労働者の正規職員化を求めて800人でストライキとハンストをしているとのことです。なかまユニオン結成20周年をお祝いするトロフィーをいただきました。
レセプション会場からのなかまユニオンへの質問コーナーで回答する井手窪委員長。
「なかまユニオンでは世代交代は進んでいますか?」という鋭い質問も飛び出ました。若い世代の労働者の必要性に応えることができるような活動をしていこうということが、参加者みんなの問題意識になりました。
最後は、長年お世話になってきた労働法の専門家・脇田滋先生によるしめくくりのあいさつ。
20年間の成果を引き継いで、さらに新たな課題にチャレンジしていこうという気持ちが盛り上がった、20周年講演会&レセプションでした。
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