カメラを止めるな! ・笑っちゃったよ、ゾンビ映画の新しい傑作
映画「カメラを止めるな!」、流行語で言うと「カメ止め」。見てきました。
かつて日本軍が死人を生き返らせるという実験を行っていたという噂のある、山の中の不気味な浄水場跡。そこで事件はおこります。
じりじりと近寄ってくるゾンビ。ゾンビになってしまった恋人に襲われる女性。「けんちゃん。私よ私。お願い!目を覚まして!」
しかし、懇願する女性に、ゾンビになってしまった男はがぶっと噛みつきます。
へたりこんだ女性にひげ面の男が近づいてゆっくりその顔を覗き込み、そして怒鳴りつけます。「本物をくれよォ!恐怖に染まった本物の顔、顔、顔!なんで嘘になるか教えてやろーか?お前の人生が嘘ばっかりだからだ!」
ひげ面の男は映画監督でした。監督は、ゾンビに襲われるヒロインの演技がどうしても気に食わず、42回も演技のやり直しをさせていたのでした。自主制作映画を撮るために浄水場跡でロケを行っていたのですが、イライラして気が立っているこだわり屋の監督の怒り爆発で、撮影現場は地獄のような雰囲気になってしまったのです。
ところが、異様なことが発生します。撮影スタッフが本物のゾンビになって、俳優たちに襲い掛かってきたのです。突然の恐怖に撮影現場はパニックに。そこへカメラをかついだ監督が鬼気迫る顔で表れて、叫ぶのです。
「これが映画だよぉ。撮影は続ける!カメラは止めない!」
ここから先は、何を書いてもネタバレになってしまうので、書くことができません。ただ、映画は驚くべき展開を見せます。ゾンビ映画の、まったく新しい形と言っても過言ではないでしょう。
ゾンビというのは、死者がよみがえって動き出し、生者の肉を食らうために襲ってくるという話です。ゾンビに襲われて死んだ者もまたよみがえって、ゾンビになって生者を襲い始めます。愛する人がゾンビになって襲ってきたとしたら、その時あなたはどうする?これがゾンビ映画の問いかける永遠のテーマです。
ゾンビは、死者ではありますが、人間の肉を食べたいという食欲だけは残っています。ですから、完全に死んでいるとも言えません。生きているのか死んでいるのか判らない連中だと言えます。
現実の世界にも、生きているのか死んでいるのか判らない人って、よく考えたらたくさんいますよね。
「仕事だから」っていう言葉で、自分としては不本意でも、違法なことやズルいことをやってしまうことがあります。そんなとき、その人の人間としての心は死んでいます。仕事中は自分の自由意志を殺して、組織の命令に従わないといけなかったりするわけです。ある意味でゾンビ状態ですよね。
そんなゾンビ状態は、上司から部下へ、経営サイドから労働者サイドへと感染します。良い人だと信頼していた上司が、ある日突然、違法な業務指示をしてきたらどうでしょうか。そんな時に自分ならどうするか。上司のいいなりになってしまえば、顧客をだますような違法行為をしないといけなくなるわけで、自分もまたゾンビに変身してしまうのです。
現実世界の「ゾンビ状態」に気づかせてくれる。そんなところまで踏み込んだのが、この「カメラを止めるな!」かもしれません。一番おそろしいバケモノは、映画を作った人、いや映画を見ている人自身かもしれません。
ポンっ!
世界的に大ヒットし、日本でも半年間のロングランとなった「カメ止め」。シリアスかと思えばコメディであり、コメディかと思えばシリアス。しかし、シリアスなだけにおかしさが倍増します。ゲラゲラ笑ってしまいました。低予算映画でここまでできるのか、映画の可能性の深さを教えてくれました。
そして、この映画は二度始まるので、最後の最後まで席を立ってはいけません。
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