そろそろ左派は〈経済〉を語ろう・目からウロコかも
書店に積んである本、「そろそろ左派は〈経済〉を語ろう・レフト3.0の政治経済学」を読みました。かなり売れているようです。
この本に出てくるわけではありませんが、バンクシーの壁画です。「コインはいらない。オレが欲しいのは変革だ」という作品です。
バンクシーの訴えたいメッセージは、それはそれであるのでしょう。しかし、「変革と同時にコインも欲しいよね」と言うのが、この本の主張です。
この本を読んで、へーっと思ったことがあります。こんなことが書いてありました。
僕の定義では「世の中を縦に割って、「内」と「外」の内側につくのが右翼」ということになるんです。それで、この右翼的な立場から見ると、「「内」と「外」の外側につくのが左翼」だと思われてしまっていると思います。しかし、もともと「左翼」というのは、経済的な利害関係に基づいて、「世の中を「上」と「下」の横に割って、下の側に立ちましょう」という立場をとる人たちのことでした。
この考え方からすると、職場や社会の経済関係を横に割って、「下」、つまり貧困な一般ピープルの立場に立って活動している私たちなかまユニオンは、「左翼」だということになるではありませんか。
私たちは、自分たちが左でも右でもなく、人間の道のど真ん中を歩いていると思ってきました。しかし、経済学的には「左」に分類されるんですね。まあ、そういう見方もあるのだと思っておきましょう。自分が他人に分類されるのって、なんか少し気持ち悪いな。
私たちも含めて、この本で言うところの「左」の人たち「左派」。この本では、左派をさらに「左派1.0」、「左派2.0」、「左派3.0」に分類しています。
古典的なマルクス主義政党は「左派1.0」なのだそうです。日本で言えば、日本共産党やかつての「社会党」です。庶民の生活を立て直すために、労働者階級が国家権力を奪い取って、国家主導の社会主義経済を作ろうという考え方です。
ソ連・社会主義世界体制の崩壊から、国家主義的な考えはうまくいかないという流れが出てきて、それが「左派2.0」と呼ばれるものだそうです。労働者階級のことを考えるよりも、ジェンダー、LGBT、障がい者、移民などの少数者のアイデンティティーから、社会を変えていこうと考えます。
この流れが政権を取ると、日本の民主党政権になります。イギリスのかつてのブレア政権も同じです。庶民の味方と言うのですが、庶民を抑えつけるような政策が次第に目立つようになってきて、崩壊してしまいました。政治的には緊縮政策が特徴でした。つまり、国家財政が赤字だから国による投資は少なくし、庶民からは増税をするという政治です。消費税の8%への値上げを決定した民主党政権のこと、記憶に新しいですよね。
「左派3.0」は、左派の中でも最も新しい流れです。イギリス労働党のジェレミー・コービン、スペインPODEMOSのパブロ・イグレシアス、そしてヨーロッパ全域に広がるDiEM25(欧州民主運動)などが、これにあたります。
政策的には「反緊縮」が特徴です。庶民の生活を成り立たせるうえでの国家の役割を重視し、庶民の生活や環境を向上させるところには積極的に投資するべきだという政策をとります。庶民の生活が一番ということです。何よりも、食べていけなければどうしようもありません。
「国家財政が火の車なのに、どこから金を持ってくるんだ?」という罵倒の声が聞こえてきそうです。そこがポイントです。「国家の赤字と言うが、誰から借りたお金なのか」「国家の借金の返済は本当はいつまでにしないといけないのか」「効果的な投資による経済成長の余地はどこにあるのか」。そんなあたりの経済をしっかりと分析すれば、解決の道はあるというのです。
日本では、「左派」と呼ばれる人たちが経済学に弱く、おかげで、欧州よりも出遅れているというわけです。ですから。「そろそろ経済を語ろう」ということになるわけです。
以前、当ブログでも取り上げた水野和夫先生の経済学は、まだまだ不十分な分析なのだそうです。何百年もの長期的な観点で経済成長率が低下していくからと言って、国が喫緊の投資をあきらめる必要はありません。国民が必要な分野には、どんどん投資をするべきなのです。
日本の「左派」は、アベノミクスをしっかりと経済学的に評価できてるか?それが問題です。それがないと、アベノミクスに取って替わる経済政策を提案することもできなくなってしまいます。「アベノミクス」を「アホノミクス」と罵倒するだけでは、何の解決にもなりません。
モリカケでもカジノ法案でも、これだけ安倍晋三政権のふるまいが酷いのに、国民の「支持率」が減らない。国民の支持は消極的なものでしかありません。とりあえずアベノミクスで失業率が減っているからです。
安倍政権への支持率の高さは、国民が愚かだからではありません。アベノミクスに取って替わる経済政策を野党共闘の側がはっきりと提案できていないからなのです。私たち一般ピープルの生活が成り立つような政策を、野党共闘は練り上げる必要があります。
目からウロコかも。一度、読んでおくべき本ですね。
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