パートだからって差別するなよ

無期雇用転換権・起動 パート差別の撤廃を!

 なかまユニオン小松病院分会は、パート労働者の無期雇用転換権開始について、4月9日の分会ニュースで見解を発表しました。

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この4月1日に、パート労働者の「無期雇用転換権」が開始されました。日本中のほとんどの企業と同じく、協仁会でもパート労働者は1年間あるいは半年間の有期雇用を繰り返す形で働いています。「無期雇用転換権」とは、これまで有期雇用を繰り返してきたパート労働者が、無期雇用に転換する権利がありますよということです。法律の改定で、4月から全国的にどこの事業所でもこの権利が認められるようになったのです。

 「無期雇用」とは、定年までずっと働くということです。細切れの雇用期間ではなく、正社員と同じで定年までずっと雇用契約が有効になるのです。

 「無期雇用転換権」は、一つの事業所で有期雇用をくりかえして5年間働き続けると発生します。5年間働き続けたら、無期雇用への転換を申し込むことができるのです。

 無期雇用への転換は、本人の希望に基づいて行われます。本人が申し込まなければ、転換は実施されません。逆に、本人が申し込みさえすれば、無条件に無期雇用への転換が認められるのです。

 

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 なかまユニオン小松病院分会では3月に、協仁会で働くパート労働者を対象に、この「無期雇用転換権」についてどう思っているかのアンケート調査を実施しました。

 「無期雇用転換権について知っていましたか?」という質問に対しては、「知っていた」と回答した人が33%、「知らなかった」が66%でした。

 「無期雇用に転換したほうが有利だと思いますか?」という質問に対しては、「有利だ」が20%、「変わらない」が60%、「かえって不利だ」が13%でした。

 「無期雇用転換権についてどう思いますか?」という質問については、「良いことだ」が20%、「悪いことだ」が0%、「わからない」が80%でした。

 「無期雇用転換の申し込みをしたいと思いますか?」については、「すぐに申し込む」が7%、「よく考えてから申し込む」が33%、「申し込むつもりはない」が47%でした。

 やはり、今回の「無期雇用転換権」については、現場のパート労働者にとっては天から降ってわいた話のような感じなのだと思います。そもそも「知らなかった」という人が3分の2でしたし、良いことかどうか「わからない」が8割をしめていました。いきなり「無期雇用転換権ができますよ」と言われても、戸惑ってしまい、ちょっと考えさせてくれというのが本音なのではないでしょうか。

 

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                                                                                無期雇用への転換は、政府の「働き方改革」の中から出てきたものです。ですから、現場のパート労働者が知らないところで話が進みました。無期雇用に転換したほうが、企業の一方的な事情による雇止めが無くなるから、パート労働者の地位の向上につながるだろうというのが、その考え方です。

 しかし、無期雇用になったからといって、正社員と同じ労働条件になるわけではないのです。そもそも、過密労働で体を壊しかねない職場で、定年まで働き続けられる自信なんてありません。

 厚生労働省のホームページを見てみますと、無期雇用転換権が実施されることをきっかけに、賃金面などの労働条件においてもパートの待遇が改善することを、厚生労働省は期待しているようです。しかし、その点については国は何もしてくれず、各職場での話し合いに任されているわけです。

 今回のアンケートで、「無期雇用転換に伴って、パートの労働条件を正社員に近づけるとしたら、どのような改善が必要だと思いますか?」という質問を複数回答可で行いました。

 「時給のアップ」が87%、「退職金の平等な支給」が80%、「各種手当の平等な支給」が73%、「5休6休の実施」が40%でした。どれも、なるほどと思いますよね

 

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 私たちは訴えます。「無期雇用になれるよ」と言われてもうれしくない職場状況が問題なのです。安心して健康に働き続けられる職場にしましょう。パートがダブルワーク無しで生活していけるだけの大幅賃上げを実現し、正社員とパートとの賃金差別を全面的に撤廃しましょう。私たちは凍結されている昇給の無条件実施とともに、賃金革命で公正な職場をめざしています。

 また、無期雇用転換の申し込みに関する悩み相談を受け付けております。気軽にご相談ください。

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パートの入職の時には労働条件を文書で明示するべきです

 つぎのような相談がありました。

 パートで働き始めたのですが、初日に雇用契約書にサインしてくれと渡されたものを見たら、事前に聞いていたのと労働条件が違うのです。こんな話し聞いていないと言ったら、人事の担当者は確かに説明したはずだと言って譲らないのです。どうしたらいいんですか。

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 残念ながら、このような事件はたびたび発生しているようです。

 パートの労働条件は、一人ひとりが違っていたりします。一日に何時間はたらくのか、何曜日にはたらくのか、様々な労働条件で働く人が混在していることが多いのです。おかげで、企業の人事担当者も勘違いしてしまうことがあるのです。入職の時のこんなトラブルは、言わばボタンの掛け違いで、労働者にとっては出鼻をくじかれる酷い話です。

 このようなことがおきることを予防するために、労働基準法の第15条とパートタイム労働法第6条では、雇用契約をむすぶ前に労働条件を文書ではっきりと示すことが義務付けられています。このような文書を「労働条件通知書」と言います。

 労働条件通知書には、雇用契約の期間、就業場所、業務の内容、始業時間と終業時間、残業の有無、休日、賃金の計算方法、賃金支払日などを必ず書いておかなければなりません。労働条件通知書を発行しなかった会社、明示するべき項目がそろっていない会社は、労働基準法違反で30万円以下の罰金を払わなければならないのです。

 罰金ですよ。罰金。

 また、人事担当者が労働基準法をちゃんと遵守するように研修を徹底することも必要です。パート職員だからといって、見下げたようないいかげんな対応をする人事担当者も残念ながら存在しています。それはパート差別であって、許されるものではないのです。

 もしも、働き始めたら労働条件が違っていたような場合。個人で人事担当者に言ってもらちがあかない場合。こんなときには地域ユニオンに加盟して会社との交渉をして是正してもらうのが良いと思いますよ。

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会社都合の退職なのに「一身上の都合」と書かせるのは不当です

 つぎのようなお問い合わせをいただきました。

 半年契約のパートです。会社側から次の契約更新はないと言われて、仕方なく退職することになりました。ところが、会社が離職票の書類を持ってきて「一身上の都合で退職します」と記入してサインしてハンコを押せというのです。自己都合退職じゃないのに、こんなもの書かなくてはいけないのでしょうか。

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 退職時の手続きに関する問題ですね。契約更新が無くて職を失うだけでもたいへんなのに、さらにややこしい悩みをかかえたわけですね。

 結論から言って、こんなものは書く必要がありません。そもそも、離職票というものは、事業所が必要なところをすべて記入してから本人にわたすものです。本人が記入する「退職理由」の欄がありますが、これは事業所が記入し終わったあとで、ハローワークにもって行く前に本人が記入するところです。

 事業所が、完成させていない離職票の紙に「一身上の都合で退職します」などという事実と違う退職理由を書いてハンコを押せなどということは、まったくもって不当なことです。

 「一身上の都合で退職」となると、自己都合退職の扱いになります。会社が契約更新を行なわなくて退職した場合は会社都合退職の扱いになります。何が違うかと言うと、退職後の失業保険の給付条件が違うのです。自己都合退職のほうが会社都合退職よりも不利になってしまいます。

 会社の都合で雇い止めをしておいて、自己都合退職扱いにしてしまおうという会社がときどきありますが、これは全くもって不当なことなのです。

 労働者のほうから「こんな会社辞めてやる」と辞表を出した場合でも、その理由が会社の落ち度であれば会社都合退職です。職場のパワハラやいじめ、健康を害するような労働環境、応じることができるはずのない配転などがあった場合は、会社都合退職でよいということになっています。

 心配しなくても、退職する本人が何も書かなくても、会社には退職後十日以内に離職票を発行する義務があります。事実と違うことを書けと言われても無視してかまいません。それで離職票を発行してくれなかったら、ハローワークに訴えたらいいのです。ハローワークからその会社に対してきついお灸がすえられることになります。

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パートの契約途中なのに「来なくていい」と言われたら

 次のような問い合わせをいただきました。

 半年契約のパートで働いていますが、契約途中なのに、もう来なくていいと会社から言われました。これは仕方のないことですか。

 有期雇用の労働者を、契約の途中で解雇できるかどうか、ということが問題ですよね。

 労働契約法第17条にはこう書いてあります。

 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

 ここまではっきり書いてある以上は、答えは簡単です。契約期間満了になる前に解雇することはできません。

 「やむをえない事由がある場合には」解雇してもいいと書いてあるのですが、この場合の「やむをえない事由」とは、正社員を解雇するときの理由よりもさらに厳しく狭い特殊な状態であると考えられています。正社員の解雇といえば、犯罪をおかしたとか理由も無いのに仕事にまったく来なくなったとか、とにかくたいへんな理由がないとできませんよね。パートの契約途中での解雇は、それよりも難しいのです。

 もちろん、労働契約法は、使用者と労働者が合意の上で雇用契約を解除することまでを禁止してはいません。両者が話し合いの結果合意に達すれば、契約打ち切りということもありうるわけです。しかし、会社のほうから一方的に「もう来なくていい」とは言えないのです。

 「パートはいつでも首にしていい」という誤解をしている会社経営者が時々いますが、たいへん残念なことです。

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パート労働法が改正されたら驚いた

 あと一週間で4月1日。今世紀最悪のエイプリルフールとなりそうなこの日、後期高齢者医療制度が始まります。そして同時にパート労働法が「改正」されるのですが、皆さんお気づきでしょうか。

 「パート労働法の改正」とはようするに、パートだから賃金とかいろんな面で正社員に差をつけられているけど、あんまりにもひどすぎる差別はなくそうぜ、という話です。正社員と同じ仕事をしているのなら同じ給料を払うべきだという話なわけです。日ごろ正社員に負けずおとらずに働いているパート職員の人は、この話を聞いて「やったね!」と喜んだはず。ところが残念なことに実はよろこんでいられないのです。

 今回の「パート労働法の改正」で、「差別をしてはいけないパート労働者」には条件がつきました。パート全員を差別してはいけないのではなくて、ある条件をクリアしたパートだけ差別が禁止されるのです。問題はその条件です。

 期間の定めのあるパート労働者は「差別をしてはいけないパート労働者」には含めません。期間の定めがある」とは、一年間とか半年間の契約で働いているということです。このブログを読んでいる一年契約で働いているあなた、あなたは「差別をしてはいけないパート労働者」に入ることができませんでした。残念っ!・・・? てゆーか、パートってほとんどの人が一年契約じゃんか!そんな人が枠に入れないなんてどういうことですかっ!

 正社員と同じ勤務時間で働いているパート労働者は「差別をしてはいけないパート労働者」には含めません。「改正パート労働法」では、パート労働者とは正社員より勤務時間が短い人だけを保護すればよいということになっています。ですから、正社員と同じ時間働いていたり、正社員よりも長時間働いている勤勉なあなた、あなたは「差別してはいけないパート労働者」に入ることができませんでした。残念っ!・・・おいおいっ!正社員と同じ時間働いているパートこそ差別するなよっ!逆ぢゃないかよ。

 遠隔地への転勤に応じることができたり、めちゃくちゃたくさん残業ができるような人しか「差別してはいけないパート労働者」には含めません。ここまで来ると何がなんだか。普通、パートの人は家の近くで就職することが多いですよね。パートの7割が女性なのは、家庭と勤務地の距離が無視できないような条件にあるからです。遠隔地への転勤に応じることができる人がパートで働くはずがありません。同じような理由で残業ができない人も多いのです。こんな条件をつけることは、女性差別そのものです。

 という感じで、今回の「パート労働法の改正」は全く意味がありません。意味の無いものの例えとして「あんこの入っていないアンパン」という表現がありますが、今回の「パート労働法の改正」は「あんこもパンも入っていないアンパンの空袋」というしろものなのです。こんな愚かな法律は、逆にパート労働者を差別してくださいと言っているようなものです。

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