アルバイトだって人間だ!

市民税の給料天引きをしてくれない会社って、どうよ!

 次のような質問をいただきました。

 アルバイトで働いています。アルバイトといっても正社員と同じくらい働いています。給料から市民税が天引きされていないので、会社にこれでいいのかと聞いても、まともにとりあってくれません。正社員は市民税が天引きされているようです。こんなことってありですか。

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 いいかげんな会社ですね。

 会社で働くときに、給料から天引きされる税金には二種類あります。所得税住民税です。この二つは、法律上も扱いが異なっています。

 まず、所得税の場合ですが、これは必ず会社が給料から天引きする義務があります。これを源泉徴収といいます。会社が労働者に支払う賃金の中から、あらかじめ所得税を差し引いて税務署に納めるのです。

 所得税の場合は、給料天引きをしないことは絶対に許されません。会社が給料天引きをせず、税務署に所得税を納めなかった場合、税務署はあくまでも会社に対して取立てを行います。所得税の延滞金も会社が支払わなければなりません。

 次に、住民税です。住民税とは都道府県民税と市町村民税とを合わせたものです。住民税の場合も、地方税法によって会社が給料天引きをすることが義務付けられています。これを特別徴収といいます。

 ところが、住民税の場合は、もしも会社が給料天引きを行なわなかった場合、住民税の請求書は労働者本人のところに直接おくられてくることになります。給料天引きではなく、労働者本人が住民税を直接に納めることも有り得るということになっているからです。おかげで、労働者本人が自分で住民税の申告をして納めにいかねばならなくなるのです。長時間勤務している労働者にとっては、たいへん面倒くさいことです。

 このあたりは、それぞれの地方自治体によっても運用の仕方がまちまちなようです。「あくまでも住民税を給料天引きする義務が会社にあるのだ」と強く主張している自治体と、「給料天引きするかどうかは会社が決めること」と一歩引いた態度を取る自治体とがあります。

 おかげで、正社員だけ給料天引きをしてパート・アルバイトはしないという差別待遇をする会社があるのです。あきらかに地方税法には違反していますが、罰則規定が無いので野放しになっているのです。ブラックな会社であることは間違いありませんね。

 ただ、会社が住民税の給料天引きをしないのだとしても、そのことを労働者本人にきちんと説明する義務はあるはずです。「うちは住民税は天引きしないから自分で納めてね」と、最初に説明するべきなのです。その説明を怠っているようであれば、その会社はブラックの上に更にブラックであるといえますよね。公序良俗に反すると言われても仕方ありません。

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「5分間の休憩時間の分の額を給料から引かれた」ってどうよ!

 次のようなお問い合わせをいただきました。

 アルバイトで、時給で働いています。お昼ごはんの休憩以外に、仕事の途中に5分間の休憩が何回かあるんです。雇われたときは、この5分間も仕事の時間のうちだと言われていたのです。ところが、給料をもらう時になって、5分間の休憩の分は給料から引かれているとわかったのです。一回分はわずかでも、何回もあるので結構な金額です。こんなこと、ありですか。

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 一回が5分間の休憩でも、12回分の給料を引かれたら、一時間分の時給が引かれてしまうことになりますね。確かに大きな問題です。

 労働基準法では、始業時間から就業時間までを「拘束時間」と言います。「拘束時間」から休憩時間を引いたものが「労働時間」です。本当に働いている時間が「労働時間」です。

 労働基準法では、一日の労働時間が6時間を超える場合は、その途中に45分間以上の休憩時間をはさまないといけないことになっています。

 さらに、一日の労働時間が8時間を超える場合には、途中の休憩時間を1時間以上にすることと定めています。

 では、休憩時間とは、労働者がどんな状態になる時間のことでしょうか。

 休憩時間とは、労働者が会社の支配から解放されて、自由に使える時間でなければならないとされています。「休憩時間が終わるまでには職場に戻ってこないといけない」という縛りはあるので、そういう意味ではゆるやかに会社に拘束されてはいるのですが、その時間のあいだは何をしようと自由です。外出しようが、電話をしようが、ゲームをしようが、自由でなければならないのです。

 休憩の途中で上司から呼び出しがあって、業務に戻らないといけないようでは、休憩をしているとはいえないのです。

 これは、労働者が自由に使える時間でなければ、労働者の体力と気力の回復がのぞめないからなのです。とっても現実的な理由です。

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 このことを考えると、休憩時間の分割はできるのかという問題が発生します。たとえば、一日1時間のうち昼休みとして45分間、3時のお茶の時間として15分間というふうに休憩時間を二つに分割するのは許容範囲だとされています。

 ところが、5分間の休憩時間を何回もとるという場合、その5分間の時間を労働者が本当に自由な時間として使えるのかという問題があるわけです。

 5分間という短時間では、せいぜいトイレに行ってペットボトルのお茶を一口飲むくらいしかできないのではないでしょうか。もしかしたら、5分間のうちに、次の仕事のための細かな準備をさせられているかもしれませんよね。接客の可能性のある業種の女性労働者なら、化粧直しをしないといけないかもしれませんね。このような場合、5分間は自由に使える時間とはいいがたいのです。

 ですから、5分間程度の短時間の休憩は労働基準法が定める休憩時間には含まれないと考えるのが一般的です。作業のあいまの手待ち時間とみなされると考えてよいでしょう。手待ち時間は労働時間に含まれます。つまり、賃金が支払われるべき時間だということです。5分間の休憩時間の分を給料から差し引くのは、労働基準法に違反する可能性がきわめて高いと思われます。

 その職場のみなさんが、5分間の休憩時間の間にどんな行動をとっているのか、その中味が問題です。実態として休憩時間に該当するのか、それとも作業のあいまの手待ち時間なのか、を明らかにすることになりますね。

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アルバイトだって労働者だ!人間だ!

 なかまユニオンの組合員にこんな人がいます。会社のやり方が納得できなくて団体交渉をし、労働審判で争っています。みなさんはどう思われますか。

 専門学校を卒業してアルバイトで働き始めた。その時、1年間がんばったら正社員にしてあげるかどうか考えるよって言われた。1年間がんばって働いた。1年後の契約更新のときに、正社員になれますかって聞いたら、正社員にしてあげると言われた。ところが、二、三日したら、やっぱり正社員にはなれないからアルバイトのままで働いてくれと言われた。正社員にするという契約書はもらっていなかったけど、だまされた気がして納得できない。くやしい。

 「契約書をかわしてないんだから仕方がないんじゃないか」と考える人もいますよね。しかし、実は雇用契約は口頭での約束でも契約として有効なのです。口約束であっても、契約書が無くても、会社が「正社員にするよ」と発言したら、その約束を守る義務が発生してしまうのです。

 この方の場合、働き始めた時点で「1年間がんばったら正社員の道がひらける」と約束したこと、そして1年間たったときに「正社員にしてあげる」といったんは上司が発言したこと、つまり二回にわたって会社側が正社員にするという意思表示をしたという経過があります。ですから、これはどう考えても法的に有効な意思表示です。いったんは正社員にするという契約をかわしたのに会社側が一方的にこれを破棄したわけですから、会社側がおかしいということになります。

 「がんばれば正社員」と会社がいうのなら、その時点で正社員として採用する基準を明らかにする義務があるのです。「これこれの基準をクリアしたら正社員になれるよ、その可能性はアルバイトのみんなに平等に開かれているよ」というのならわかります。しかし、基準も明らかにせずに、管理職個人の独断と偏見で採用が決まるというのでは全然ダメなのです。そもそも正社員にする気なんてなかったんじゃないかと疑われてもしかたありません。

 問題は、「アルバイトに対して口約束をしたからって、それを守る義務なんてないじゃんか。」という発想が会社側にあるということです。これは日本の社会にしみついた発想ではないでしょうか。アルバイトで働くものを軽視する考え方です。アルバイト差別ではないでしょうか。

 今の日本社会では、専門学校を卒業しても正社員で働ける就職口はなかなかありません。アルバイト、パート、日雇い派遣というような非正規労働の就職口しかないのです。だとしたら、アルバイトであっても立派な労働者なのです。労働組合法も労働基準法も職業安定法も適用される立派な労働者なのです。

 安い給料で働かせたうえに、「がんばれば正社員」というエサをぶらさげて不満を押さえつけ、実際には正社員にする約束を守らないというのでは、アルバイトの人間は使い捨てということです。これは人間を人間として扱っていないということなのです。許せません。

 アルバイトだって労働者だ!アルバイトだって人間だ!労働者として扱え!人間として扱え!私たちは、このことを強く訴えます。

 

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