正社員をパートに引きずりおろす?キケンな有期雇用法制化
11月16日、なかまユニオンとOPEN(平和と平等を拓く女たちの絆)は、有期雇用法制化を考える学習会を開催しました。
今年の9月10日、政府の私的諮問機関である有期労働契約研究会は、有期雇用法制化に関する報告書を出しました。
この研究会は、有期雇用、つまりパートやアルバイトなどの非正規雇用について新しい法律を作ることをめざしている研究会です。
パートやアルバイトが職場で差別されていることは、誰もが問題だと感じていますよね。正社員並みに働いていても、給料は半分以下。ボーナスがもらえなかったり、もらえても正社員に比べてすごく少なかったりします。その他、いろいろなところで差をつけられて嫌な思いをしながら働いているのです。
このような差別の解消を求める声の大きさに押されて、政府は有期雇用についての新しい法律を作ろうと考えました。そして、この研究会を発足させたのです。
ところが、今回の研究会の報告書はとんでもない内容でした。
報告書がいいたいことは要するにこういうことです。パートが正社員に比べて低く扱われているのが問題なら、正社員の方の待遇を引き下げれば、それで差別が解消されて結果オーライになるじゃないか。
報告書は、パートの待遇を引き上げることで差別を解消するのではなく、正社員の待遇を引き下げることを提案したのです。
具体的にはこうです。まず、現在正社員として働いている労働者の中には、「真の正社員」と「ニセの正社員」がいるのだと論じます。
「真の正社員」として認められるためには、こんな条件をクリアしなければなりません。まず、残業しなければならない時には喜んでいくらでも残業する人です。自分の健康とか家族の都合とかを考えて「今日は早く帰らないといけないんで・・・」と残業をしぶる人には「真の正社員」の資格はありません。
「今からソウルに出張に行ってくれないかな。向こうの取引先と話をまとめるまで滞在してもらうから、何日間の出張になるかは、君の腕次第だね。一日も早く話をまとめてきてくれたまえ」と突然いわれても、「わかりましたっ。喜んで行ってきます。」と必ず言えるというのも、「真の正社員」である条件です。自分の健康とか家族の都合で、ためらう心が発生するようでは、「真の正社員」とは言えません。
「君、ウランバートル支社に営業主任として配属されることが決まったから、来週から行ってくれたまえ。良かったな、出世コースだぞ。」と言われたら、「ありがとうございますっ!」と最敬礼をして、来週までに単身赴任のためのあれやこれやの準備をできなくては、「真の正社員」とは言えません。やはり、自分の健康とか家族の都合でそれができないようではだめなのです。
このような、会社に人生を賭け忠誠を誓うスーパービジネスマンだけが、「真の正社員」の姿なのだと報告書は言います。
では、そうではない人はどうなるのでしょうか。健康上の問題をかかえていたり、めんどうを見るべき家族がいたりして、会社の無茶な命令どおりに残業や出張や転勤ができない人はどうなるのでしょうか。あるいは英語や中国語やモンゴル語ができないのでウランバートルへの転勤ができそうもない人はどうなるのでしょうか。そういう人は「ニセの正社員」だから、今後は正社員の地位は剥奪されて当然だと言うのです。
報告書の考え方では、今後は正社員の下に「正社員二流」とか「正社員三流」とかいう地位をつくって、「ニセの正社員」の人たちはそういう「二流」「三流」に格下げにすると言うのです。
「真の正社員」である資格の無い人は、「二流」「三流」に格下げして、当然のことながら賃金もパート並みに下げてしまうというのが、報告書の提案です。なるほど、これでパートと正社員との差別は解消して、めでたしめでたしとなるわけか・・・・・・
って、そんなこと、めでたくないわっ!
ほとんどの正社員は「二流」「三流」に格下げされるわけでしょ。とんでもない話です。それでパート差別が解決したと考える連中は、どうにかしています。日本中で雇用の非正規化が進んで、日本の労働者全体が生活できなくなってきたのが問題なのに、それを更にひきさげるんですか?どこまで労働者をいじめたら気がすむんだっ!
私たちは、このような内容で有期雇用法制化が進むことには、断固として反対です。
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