アスベスト汚染国日本で生き残る

アスベストを一目で見分ける方法はありますか

 次のような質問をいただきました。

アスベストが入っているところを、一目で見分ける方法はありますか。

 アスベストはたいへん危険な発がん性物質なのですが、日本では建築材料としていたるところに使われています。1970年から1985年ごろに建てられた建物には特に多いのです。

 残念ながら、アスベストが入っているところを一目で見分ける方法はありません。たとえば、次の写真をご覧ください。

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 これは、私たちが働く小松病院の中で、実際にアスベストが使われている場所の写真です。この天井に、アスベストを大量に含む珪酸カルシウム建材が使われています。

 見たところは、アスベストを使っていない天井と見分けがつきません。アスベストがむき出しにはなっていないので、見た目では分からないのです。そのかわり、建物を取り壊さない限りは飛び散る危険性もありません。地震で壊れたら危ないですけどね。

 建材の名前と、建築の年がわかれば、政府の発表しているアスベスト建材リストを使って調べることができます。しかし、古い建築の場合には建材の名前がわからないということもよくあります。

 そういうときには、専門の業者に依頼して削ってサンプルを採取してもらうしかありません。アスベストが入っているかどうか電子顕微鏡で調べてもらうしかないのです。

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「アスベストの根絶を」被害者家族が訴え

 2月24日、東京でアスベスト加害企業に対する抗議行動が行なわれました。東京けんり総行動の一環として行なわれたものです。なかまユニオンも参加し、建物解体時のアスベスト被害の廃絶を訴えました。

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 東京都内のニチアス(旧日本アスベスト)前での抗議行動です。ニチアスは日本最大のアスベスト製品製造会社でした。被害は工場でアスベスト製品を加工していた労働者にとどまらず、地域住民や進出先の韓国にまでおよんでいます。

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 ニチアスに対しては、岐阜・札幌・奈良の三ヶ所で補償を求める裁判が始まっています。

 たとえば札幌の事件では、ニチアスの下請けでアスベスト吹きつけ作業をしていて石綿じん肺を発症して亡くなった労働者の方の遺族が提訴されています。1月27日に行なわれた第一回口頭弁論では、妻が意見陳述。夫が持ち帰るアスベストだらけの作業衣を洗濯していたおかげで自身もアスベスト被害を受け、胸膜プラークを発症していることを訴えました。アスベストってこわいですよね。家族にまで被害が広がるのです。

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 こちらはやはり東京都内の住友重機本社です。住友重機に対しては、アスベストユニオン(全造船アスベスト関連産業分会)が裁判を起こしています。アスベストは吸い込んでから20年も30年もたってから発症するので、そのときには会社を退職していることも多いのです。ですから、アスベストユニオンには退職した人でも加盟することができます。

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 住友重機本社前では、アスベスト被害者の家族が、「アスベストの根絶」と被害者に対する補償を訴えました。アスベスト被害は本人も苦しいのですが、家族もたいへん苦しめられるのです。

 アスベスト被害の根絶を、ぜひとも実現していきましょう。

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アスベスト建物の解体工事を見てきました

 アスベスト(石綿)が使われている建物を解体するときには、その粉塵が飛び散らないようにすることが義務付けられています。吸い込んだら癌になるんですからね。

 これは、実際にビルの解体工事現場の前に張り出されている掲示です。アスベストが使われている建物の解体工事の時には、このような掲示物を公開することが法律で義務付けられています。一枚目は作業方法についてのお知らせです。

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 二枚目は、アスベストについての事前調査の結果のお知らせです。

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 労働安全衛生法、石綿障害予防規則、大気汚染防止法によって、解体工事をする業者はこのような掲示物を貼り出さねばなりません。

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 アスベストが含まれる建物を解体するときには、水をジャブジャブとかけながら作業をするなど、アスベストの粉塵が舞い上がらないような工法をすることが義務付けられています。最も危険な「レベル1」とされるアスベスト吹きつけがある場合には、作業現場の密閉なども義務付けられています。写真の解体工事は「レベル1」です。もちろん、密閉されている中までは、危険なので立ち入ることはできません。

 ところが、いくつかの解体工事の現場を見てみると、このようなアスベスト対策をせずに工事をしているところもあるのです。本当にアスベストが無いのかなあと、不安になってきます。

 建設労働者のこんな話があります。ビルの解体工事の現場に行ってみたら、「アスベストは無い」と聞いていたにもかかわらず、実際はアスベストだらけ。しかし工事を止めることが許されないので、がまんして解体作業を行なった。当然、アスベストの粉が飛び散り、作業員はそれを吸い込むはめになります。

 アスベスト隠しは法律違反です。アスベスト対策をちゃんと行なうように、建設業界に求めていかねばなりません。

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そもそも、アスベストって何ですか?

 アスベストの話をしても、「そもそもアスベストって何ですか?」という方も多いですよね。アスベストは石綿のこと。石綿と書いて「いしわた」とも「せきめん」とも読みます。

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 これが、アスベストの9割をしめるという白石綿(クリソタイル)です。蛇紋石が繊維になったもので、たしかに見た目は綿みたいですよね。

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 こちらは青石綿(クロシドライト)です。角閃石が綿状になったものです。

 青石綿は特に毒性が強いので、日本では1995年に製造・輸入が禁止されました。毒性が比較的弱いとされていた白石綿も2004年には全面禁止されました。

 アスベストの繊維は、信じられないほど細いのです。太さが一万分の一ミリから十万分の一ミリしかありません。ですから、触るとすぐに砕けて、長さが百分の一ミリというような目に見えない小さなチリとなって飛び散ります。アスベストのチリは軽いので、空気中をいつまでも漂い続けます。ですから、知らない間に吸い込んでしまう危険性が大きいのです。

 もしもアスベストのチリを吸い込んでしまうとどうなるでしょうか。アスベストはいくら目に見えないほど小さいとはいえ、針のように鋭くて硬いのです。目に見えないほど小さい針を吸い込んだようなもので、肺の中にチクチクと突き刺さってしまうのです。

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 これが体内に入ったアスベストの顕微鏡写真です。人体内に入ったアスベストは、鉄分が付着して金色になります。いったん体内に入ったアスベストは、なかなか排出されません。

 アスベストには発がん性があります。吸い込んで30年ほどたつと肺癌や中皮腫をひきおこします。

 中皮腫というのは、肺を取り巻く膜「胸膜」が癌化するものです。

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 これは中皮腫の人の胸部レントゲンとCTの画像です。右胸(画像の左側)に中皮腫ができています。呼吸困難をおこす、たいへん苦しい病気です。たくさんのアスベストを吸い込んだ人は潜伏期間が短く、20年ほどで発症します。逆にわずかのアスベストを吸い込んだだけでも、50年後に発症することもあるそうです。そしていったん発症すると、急速に悪化するのです。

 ですから、小さな子どもにはほんのちょっとでもアスベストを吸い込ませてはいけませんね。だからと言って、50歳過ぎのオジサンなら吸い込んでもいいかというと、決してそんなことはありません。特に、建物解体作業に従事するような労働者は、アスベスト対策がきちんと行なわれていないと大量に吸い込むことになってしまいます。それはたいへん危険なことなのです。

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こんなところにもアスベストが使われています

 次のような質問をいただきました。

 アスベストは危険だというけど、身のまわりではどんなところに使われているんですか。

 これまで、私たちもアスベストのことはあまりよく知りませんでした。それで、東京の中皮腫・じん肺・アスベストセンターに問い合わせるなどして調べてみました。

 すると、意外なことに私たちの身の回りはアスベストだらけであることがわかりました。いたるところに使われているのです。

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 これはオフィスの床です。床に貼ってある「Pタイル」にはアスベストが入っています。この素材はプラスチックにカルシウムやアスベストを混合して固めたものなのです。

 Pタイルは、日本中のあらゆるオフィスの床に貼られています。薄っぺらいものですし、タイル1枚あたりのアスベストの含有量はそんなに多くありません。しかし、なにしろすごい面積にはってあるので、アスベストの総量はかなりのものになります。

 このPタイルは丈夫なものですので、通常の使用方法ではアスベストがもれて出てくることはありません。しかし、建物を壊すときにはPタイルが割れるので、そのときにアスベストの塵が空気中に放出されるのです。

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 これはオフィスの天井です。天井に使われている「石膏ボード」には、アスベストが混ざっているものがあります。アスベストを混ぜてない製品もあるのですが、外見からは区別ができません。建物を建てたときの記録があれば、どこのメーカーのものを使ったかがわかるので、アスベストが入っているかどうかを調べることができます。石膏ボードはオフィスの壁にも使われています。

 このように、オフィスの建物にもアスベストは使われています。これ以外に、たとえば病院ならば火を使うボイラー室や調理場には断熱材・耐火材として大量のアスベストが使われていると考えられます。

 国土交通省が、アスベスト建材についての情報を出しています。下記のサイトから見ることができます。

 目で見るアスベスト建材(国土交通省)

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